Book9看板 Dragon Sword Saga9 〜Ⅶ.-1〜
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~ 第9巻『時の歯車』 ~

剣月紫ライン  Ⅶ.『科学と魔道』 妖精紫アイコン1 ~ クリスの伝言 ~  剣月紫ライン

※9巻では、登場人物「スー」→「サラ」に変えました。 他の巻も徐々に「サラ」に統一していきます。m(_ _)m 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「クレアとラン・ファさん、もう魔道士の塔で、手続きは済んだのかなぁ」  カイルが、椅子に逆向きに座り、背もたれを抱きかかえながら、溜め息混じりに 言った。 「つまんないな。早く帰って来ないかなぁ」  クレアとラン・ファが魔道士の塔へ出発した後、ケイン、マリス、カイルは、 ハッカイの店の準備を手伝い、そのまま、店で昼食をご馳走(ちそう)になっていた。 「ほら、カイル、料理が来たわよ」  隣で、マリスが、彼の肩を軽く叩いた。  生野菜と果物が置かれたテーブルには、ケインの運んできたスープも並んだ。  ケインの隣には、いつものように、ハッカイのまだ幼い娘リーシャが座り、ケイン に手伝われながら、スープの中の肉団子を頬張っていた。 「ケインも、肉団子スープ好きだったよな」  厨房の中から、ハッカイが笑って言った。 「反抗期でレオンとケンカしたり、どこかで自主トレしてたりで、俺たちと一緒に いなくても、配給が肉団子スープの時は、必ず間に合うように戻ってきてたもんな」 「へえ、そうなの?」  マリスが興味津々に目をかがやかせ、正面にいるケインを見た。 「ああ、まあな」  ケインは、あまり取り合わずに、リーシャの世話を焼いていた。 「反抗期のケインて、どんなだったの?」 「別に、そんなに激しく反抗してたわけじゃなかったよ。『ごっこ遊びをやめてくれ』 って言っただけだよ」  その『ごっこ遊び』については、ケインは多くを語りたがらなかったので、マリス にもカイルにも、わからないままだ。 「マリスこそ、反抗期は終わったのか?」 「まっ、あたしの方が二つ下だからって、子供扱いしないでよ。反抗期かどうか わかんないけど、城に連れてこられてからは、毎晩のように国王ーーああ、父親ね ーーとケンカしてたし、何度も城から脱走しかけたし、……結局、国からも脱走した けどね」 「……反抗の規模が違うな」 「ホントだな……」  カイルとケインが、顔を見合わせてから、改めてマリスを見る。 「だけど、それって、……『反抗期』なのか?」 「そうだぜ、単に、性格じゃねぇの?」  ケイン、カイルが口々に言うのを、マリスは眉間にシワを寄せて見ていた。 「ああ、やっと見つけた!」  やたら明るい声が、背後から聞こえ、三人が振り返ると、そこには、金髪セミロン グの青年が、にこやかに立っていた。  その後ろには、黒い短髪の険しい表情をした青年、長い黒髪の、少々露出気味の 衣装の上に甲冑を身に着けた女戦士、カールした金髪のツインテールをリボンで結わ えている、黒いマントをはおった魔法少女、そして、肩に黒いイワコウモリを乗せた、 背の高い痩せた魔道士の男が控えていた。 「なんだ、クリスと黒い騎士団じゃないの」 「や、やあ、マリスさん。その節は、どうも」  声をかけた金髪の青年クリスは、どこかたじろぐように、ぎこちない笑顔になって、 マリスに微笑んだ。同行した当時の恐怖が甦ってきたといったところであろうか。  ケインやマリスの白い騎士団と、クリスたち黒い騎士団が、一対一で対決していた 最中に、魔道士の塔の魔道士ドーサたちにさえぎられ、逃げる間に、黒い騎士団は 散り散りになっていたのだった。  全員がそろうまで、ケイン、マリス、カイル、クレアの四人とクリスとは、行動を 共にしていた時、黒いデモン・ソルジャーと触発したのだった。  クリスの恐怖とは、それだけではなく、その時のマリスの、戦いながら走り通す 作戦と、野盗から奪ったあらゆる武器で嬉々として戦ううちに、武器が次々と破壊 されていった場面も絡んでいただろう。 「ああ、お前たち、全員見付かったのか。良かったな」  ケインが、リーシャの口を、布で拭きながら言った。 「ふん、ケイン・ランドール、俺に、あれほどの腕を見せておきながら、子守りなん かしてやがるのか。まったく、お前というヤツは、いつも、うだつが上がんな」  黒髪の格闘家ダイが、険しい表情のまま腕を組み、いつものようにケインにつっか かるが、ケインの方は、そう言われても何とも思わなかったようで、リーシャの話を、 うんうんと頷きながら聞いてやっていた。 「それ、ケインさんの隠し子ですかぁ〜? それとも、白い騎士団の新しいメンバー だったりして。キャッ! やっだー!」  魔法少女マリリンが、甲高(かんだか)い耳障(みみざわ)りな声で笑った。  それには、マリスとカイルが、呆れた顔になった。 「ところで、僕たちの方は無事に揃(そろ)いましたが、そちらは、どうです?  クレアさんは元気になりましたか? お姿が見えませんが。ヴァルドリューズさんも、 まだお見かけしてませんが、まだ会えないんですか?」  カイルが面白くなさそうに、クリスを見上げた。 「なんだよ、おめえには関係ないだろー」 「あっ、わかった! 仲間割れでしょぉ〜? キャッ!」  マリリンが、いい気味だと言わんばかりに笑う。 「……ってことは、人数では、私たちの勝ちね! ほーっほほほ!」  女戦士サラが、マリスたち三人を見下ろし、高笑いをした。 「相変わらず、バカじゃないの?」  マリスは横目で二人を見て、呆(あき)れ顔で悪態(あくたい)をついてから、クリス に向き直った。 「ヴァルは多分もうすぐ帰ってくるわ。クレアは、今、魔道士の塔に登録に行ってる の。マリリンこそ、登録しておいた方がいいんじゃないの? あんた、この間ドーサ にヤミ魔道士だって、言われてたでしょう?」 「マリリンは、もうママと一緒に行って登録してきたもん〜。ママは偉大な魔法の 先生なんだからね〜」  嫌味な言い方で、マリリンが答える。  「あんた、ママいたの? だったら、なんで今まで登録してなかったのよ」と、 またマリスが呆れた。 「おい、クリス、こいつらに用があるなら、さっさと済ませろ。まったく、とんだ 寄り道だ」  ダイが、短気な調子で、じれったそうに言う。  クリスは、出来るだけ声をひそめて、ベアトリクスからの一行が、マリスを探して いることを告げた。 「マーガレット!? カルバンも! 懐かしいわ! あら、でも、どうして、あたしを 探しているのかしら?」 「さあ。僕も、あんまり信用してもらえなかったのか、詳しくは話してもらえません でしたが」  マリスは、自分の知り合いということで、ベアトリクスで何かひどい仕打ちをされ、 国を出て来たのでは……などと考えを巡らせ、彼らの身を案じていた。 「神殿から出たことのないマーガレットが、旅をしているなんて……。過酷じゃない かしら」  クリスの話から、カルバンの他にも、メガネの男子と、もうひとり男子が一緒らし いことがわかったマリスは、クラウスと、おそらくカルバンとも仲の良かったパウル ではないかと考えた。  少なくとも、元ハヤブサ団の彼らがいれば、良い用心棒になるだろうと、少し安心 することが出来た。 「あたしたち、クレアとヴァルが戻ったら、妖精の国に行かなきゃいけないし、その 後は、このタイスランには戻らずに、別の国に移動すると思うわ。それが、人間界な のか、別の世界か、今は何とも……」  ケインのマスター・ソードの魔石をそろえることを最優先としたいが、魔石は、 人間界ではないところにあるという。 「とにかく、妖精の国に行かないと、次に旅する所も決まらないわ。異世界に行って る間は、マリリンの水晶球にも映らないと思うから」 「妖精の国だと? ふん、そんなところ、あるものか」  と、マリスの言葉を打ち消したのは、格闘家ダイだった。 「あるよ。ミュミュの故郷なんだよ~」  突然、ミュミュが、ダイの目の前に、姿を現した。 「おっ、お前っ! いたのか!?」 「いたよ~」  驚いたダイが一歩引き、目の前でパタパタと羽を動かし、浮かんでいるミュミュを 見下ろした。 「ふ、ふん! ならば、どうやって行くというのだ?」 「それは……」 「ほら、答えられないじゃないか」  ミュミュは、心外だと、少し頬をふくらませた。 「ミュミュ、『道』忘れちゃっただけだもん!」 「なにっ!? お前、そこまで、バカだったのか?」 「ひどいよー! あ~ん、ケイン~!」  ミュミュは泣きながら、ケインの肩に乗ると、頬にしがみついた。  ケインの頬は、ミュミュの涙で濡れていき、耳の近くで、わあわあ泣かれ、さも うるさかっただろうが、彼は何も言わずにいた。  苦笑いをしていたクリスが、少し真面目な表情になった。 「とりあえず、マリスさん、妖精の国から帰ったら、どこかの国で、落ち合うとか、 決めておきませんか? それなら、僕がマーガレットさんたちにお会いした時に、 お知らせ出来るので」 「そうね。ありがとう。じゃあ、どこがいいかしら? そう言えば、ラン・ファが、 南国ヒョン・カンが過ごしやすくて気に入ってるって、言ってたわ。そこに、魔道士 の友達もいるって。だから、時々行ってるんですって。そこにでも、寄ってみようか しら?」 「いや、そいつは、やめておいた方がいい」  と、口を挟んだのは、カイルだった。 「なんでだ? カイル、そこ知ってるのか?」  ケインが不思議そうに、カイルを見る。 「ああ、俺もしばらく住んでたことがあってな。確かに、過ごしやすくて、貿易が 盛んで活気があって、俺も好きな街だったが……」 「じゃあ、なんで?」 「あそこには、親友もいて、俺も会いたいとは思うが……、行けば、確実に、俺は 殺される!」  カイルの顔は青ざめ、自分の身体を抱え込むと、ぶるぶると震え出した。 「なにっ? そんな凶悪な敵が!」  ケインも深刻な顔になり、そんなカイルの様子から目を反らせなくなった。 「……とりあえず、後回しにするか」  カイルから目を離さずに、ケインがマリスに言った。  マリスは、ケインほどカイルの話を真に受けてはいない様子だったが、頷いた。 「じゃあ、頃合いを見計らってから、マリリンが水晶球のぞいてみてよ。さっきも 言ったけど、異次元の世界にいる間は映らないし、人間界にいれば映るから」  マリリンが、思い切り嫌そうな顔になった。 「えーっ、マリリン、タダ働きなんかしないんだからー」  サラが人差し指を立てる。 「あら、だったら、あのマーガレットって子たちに、その分支払ってもらったらいい んじゃない?」 「ああ、そっか。そーだねー!」  二人のやり取りを見ていたカイルが、「セコい! 俺よりも!」と叫んだ。  マリスも「相変わらずね」と言って呆れた。 「マーガレットたちだって、旅費がそんなにあるとは限らないし、……じゃあ、いい わよ。あたしにツケといてくれれば、後でまとめて支払うから」  そのマリスの言葉に、マリリンの目が、キラン! と光った。  それに気付いたマリスは、即座に付け足した。 「ただし、それが不当な請求だとわかった場合は……」  と言いながら、手を組み、ボキボキと指を鳴らす。 「わかっているんでしょうねぇ?」  マリリンの顔は、「ひっ!」と引きつった。 「話はもう済んだか。俺たちは、さっき見つけた食堂に行く。こいつらと一緒にメシ を食うと、ロクなことにならんからな」  ダイは、じろっと、リーシャの世話を焼くケインを見下ろした。 「ケイン・ランドール、貴様との決着は、いずれ着けてやる。今度会う時までには、 覚悟しておけよ」  それには、ケインは、不審な顔を向けた。 「お前との決着なら、この間、もう着いただろ?」  ダイが、カッと、顔を上気させた。 「あんなもの決着と言えるか、ふざけやがって! いいか、今度こそ、本当に決着を 着けてやる! 逃げるなよ、わかったな!」 「それなら、今でも構わないけど?」  きょとんと、ケインが答えると、ダイが、人差し指をケインに突きつけた。 「いや、今はいいから、今度会った時にしろ。絶対だぞ!」 「え? ああ……」  わけのわかっていなさそうなケインに、ダイは背を向けると、逃げるようにして、 店を出て行った。 「それじゃ、あんたたち、くれぐれも、私たちの邪魔はしないでちょうだいねっ!」  女戦士サラも、長いストレートヘアを風になびかせながら、さっそうと歩いて行っ た。  その後を、キャッキャ笑いながらマリリンが付いて行き、イワコウモリをのせた ヤミ魔道士ズイールが、無言で出て行った。 「すみませんでしたね、お食事中のところ。それでは、また」  クリスがにこやかに去って行った。 「さ~て、じゃあ、俺もちょっと出かけてくるかなぁ」  カイルが立ち上がった。 「ナンパでもしに行くのか? いつも注意してくれるクレアが、今いないからって、 あんまりハメを外すなよ」 「ちげーよ! お前のためだ、バカ! たまには、お前らも、子守りじゃなくて、 ちゃんと二人で出かけてこいよ」  ケインに釘を刺すようにして言うと、カイルは、さっさと店の外へ出て行った。  ぽかんと見ていたケインの向かい側では、恥ずかしそうにうつむいたマリスの頬が、 うっすらと色付いている。  ケインは、意外そうな顔でマリスを見ると、少し考えてから言った。 「マリスの好きなところに、行くか?」  マリスは嬉しそうに、顔を上げた。 「うん」


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「まだケインの記憶が、ちゃんと戻ってないみたいだからな。にしても、俺って、 いいヤツ!」  独り言をいいながら、カイルは、街中のある食堂へ入っていった。  広々とした店であった。  窓側の席から、広場の噴水が見える。  たまには、ゆったり、ひとりで茶を飲むのもいいもんだな、と思った。  ドラゴンの谷から帰ってからというもの、カイルは、町娘を誘って遊ぶ気にはなれ ないでいた。  近頃、皆に内緒で、自主的に剣の練習をしてもいる。  以前の自分では考えられないことだと、最も驚いたのは、彼自身だ。  伝説の魔物ハンター・フィリウス王子が持っていた魔法剣。それを手にしている 自分も、もしかしたら、伝説の戦士になれるのかも……!  時々は、そう考えてもきたが、ドラゴンと共に魔族と戦った経験が、その考えを 現実に近付けた気がしてならない。  突然、店の木戸が乱暴に開いた。  物思いにふけっていたカイルも、客たちも、思わず注目した。  人々の目についたのは、人の背を頭ひとつ分上回った木の人形であった。  その前には、小柄で、小太りな老人がいる。  着古した色褪(いろあ)せた服、ぼさぼさの白髪に、口の周りにも、ぼうぼうに白い 髭(ひげ)を生やし、小型の筒状になった拡大レンズを、片方の目にだけ、頭から被れ るよう改造して、装着していた。  人々を、ぎょっとさせるような風貌(ふうぼう)の老人である。 (なんだ、ありゃあ?)  カイルは顔をしかめて、異様な雰囲気を醸(かも)し出す老人と人形とを、そのまま 注意深く観察していた。 「失礼だが、あんたは?」  カウンターの中から、中年の男が出て来た。  老人は、男を見上げながら、答えた。 「あんたが店主かい? この店に、ワシの作ったロボット試作品第二号を、置いて みないかね?」  ひどくしわがれた濁声(だみごえ)であった。  店主は、ただでさえ、うさん臭く見えるその老人と、その後ろに突っ立っている 木の人形とを見比べた。 「ロボットって、一体なんのことだ?」 「人間の代わりに仕事をする機械人形じゃ。使ってみれば、その価値がわかる。 ロボットは人間のように疲れたりはせんし、教えられた通り寸分狂わずに仕事をこな すことが出来るのじゃよ。計算ではな。試しに、簡単な掃除にでも、使ってみなされ」  店主も、遠くからはカイルも、じろじろとロボットを見つめる。  頭、胴体、手足の節目までがあり、一見、人間のような作りを真似てはいるが、 このようなものに、人の命令通り動くということは、本当に可能なのだろうか。  どう見ても、人々には、そんなことは想像がつかなかった。 「それで、あんたは何者だい?」 「ワシか? ワシは、この世に科学を浸透させようと貢献(こうけん)しておる 一科学者、ギロック博士じゃ」  科学と聞いて、カイルは、懐かしい顔になった。  先ほど、ヒョン・カンの話をした時と、記憶が重なる。  彼の親友も、冒険をしながら、科学で、人々の役に立つことを考えていた。  カイルは、老人を、遠目から、多少なりとも尊敬を込めて見つめた。  だが、店主の方は、顔をしかめていた。 「ギロックだとぉ? ああ、思い出したぜ! お前さんか、隣町にも現れた、変な ポンコツからくりを売りつけてるじいさんってのは」 「なっ、なんじゃと!?」  ギロックと名乗った老人は、目を見開いた。 「ワシのロボットは、ポンコツなんかではないわい!」 「いいや、隣町の食堂は、お前のからくり人形のせいで、ひどい目にあったと聞いて るぜ。冗談じゃねえ! そんなもん、置いておけるか。さあ、帰った帰った!」  店主が目配せすると、従業員の男たちも、老人と木の人形とを追い出そうと、厨房 から出て来た。 「待ってくれぃ! タダで構わん! こやつを、試しに使ってみておくれ!」 「往生際(おうじょうぎわ)が悪いぞ、じいさん!」  ほとんと悲鳴のように喚(わめ)く老人を、体格のいい若い男たちが抱え込み、店の 外まで追い出しかけたところだった。  ピーッ!  木人形の頭のてっぺんから、蒸気が勢いよく噴射した。 「ど、どうしたのだ、二号!」 「危ねぇっ! みんな逃げろ!」  博士の慌てた声とカイルの声が重なった時、とてつもない爆発が起こり、店の天井 を、巨大な炎が突き抜けて行ったのだった!


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