Book7看板 Dragon Sword Saga7 〜Ⅵ.-3〜
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~ 第7巻『ドラゴン・マスターと竜』 ~


剣月青ライン  Ⅵ.『魔空間』 妖精青アイコン3 ~ 逆襲 ~  剣月青ライン

 ドラゴンは、マリスたちをそれぞれ乗せたまま、旋回した。 『遅くなって、悪かった。魔空間の中で、少々迷ってしまったもので』  彼らは、ベビードラゴンのように、バスター・ブレードが裂いた空間からやって きたのではなく、自力であったので、迷うということは有り得た。 「大丈夫なの? ここに来ちゃって」  マリスを乗せたドラゴンは、荒野に、スグリと一緒に来た四頭のうちの一頭、 ウシオであった。  ウシオは、一声鳴いてから、答えた。 『ベビーが何の戸惑いもなく、ただあなた方を助けようと、魔空間に入っていくのに、 我々大人の竜が行かなくてどうする? 我々は、ゴールド・ドラゴン本来の戦いを、 まだベビーに伝えておらなかったことに気付いたのだ。戦いは、能力で、勝敗が 決まるものではない。竜族が持っていた、最高の武器『勇気』を、あなたがたは、 思い出させてくれたのだ』  マリスは、後ろのドラゴンに乗っているケインたちを振り向いた。  カイルが抱えている、治療中のケインには、ベビーがつきっきりであった。 「あたしは向こう見ずなだけ。勇気を教えたのは、ケインだわ」  マリスは顔をほころばせた。 『それと、我々は、そちらの娘よ、あなたにも教えられた』  別のドラゴンに乗ったクレアに、首を向けて、ウシオが言った。 「えっ、わ、私!? 」  クレアは驚いて聞き返す。 「私なんて、たいしてお役に立っていないのに……」 『申し訳ないが、始めは、たいして使えない人間だと思っていた。だが、魔空間での 白の能力(ちから)、あれは、素晴らしいものだった。正直に言って、人間で、あれ ほどの白の使い手を、我々は知らなかった。王も、大変に驚かれたことだろう』  クレアは、恥ずかしそうに、頬を染めた。 「そんな……。私、ずっとスランプで……。これまでだって、失敗ばっかりしていた し、師匠にも怒られていたし、戦闘の経験も少なくて……。だけど、私の経験した 恐怖よりも、あなたがたと魔族との戦いの方が、ずっと深刻で、根深くて、残酷で した。そう思ったら、たかが個人的な私の悩みなんて、あなたがたの、種族としての 問題と比べれば、あまりにも小さ過ぎる、と気付くことが出来たのです」  クレアの瞳が、潤んでいく。  別の竜が、クレアの側に飛んできた。 『俺たちは、なにも出来ないと思っていたあんたが、あそこまでのことをやってのけ たのを見て、再び勇気が湧いてきたんだ。あんたみたいなお嬢ちゃんに、あんなこと が出来るなんてさ! 俺たちにとっちゃあ、ベビーが魔族をやっつけたくらいに、 凄いことなんだよ! 』  また別の竜も、寄ってきた。 『しかも、ベビーにも、あんな力が……リリドにダメージを負わせるほどの力が、 あったとは! 我々は、ベビーには何も出来ないと思い込み、唯一の子孫だからと、 変に保護し過ぎた。あれほどの力に気付いてやれず、眠らせたままにしていた上に、 戦い方まで教えてやらずにいたのだと、我らこそ、気付かされた』  反対側からも、他の竜が追いついた。 『私たちは、今度こそ、本当に、目が覚めた。今度こそ、何があっても、魔族と戦い、 自分たちの未来を守るのだ! 』  ドラゴンたちは、魔空間の一点に、一番安定している箇所を見抜き、人間たちを、 それぞれ背から下ろした。  もう少しで治療の終わりそうなケインには、ベビーがついていて、カイルも付き 添っていた。  皆を下ろすと、ゴールド・ドラゴンたちは、魔空間の中で、雄叫びを上げ、士気を 高め合っていた。 「私でも、人の心を動すことができたなんて……! 」  この場合は、ドラゴンであったが。クレアは感激していた。 「スランプがあってこそ、だったのかもよ? 」  隣で、マリスが、ひょいっと、顔を覗かせた。 「クレア、凄かったわよ。あなたの白魔法で、魔族の奴らが、ボロボロやられていっ たじゃない。これなら、今後も、皆、安心だし、心強いわ! 」 「マリス! 」  クレアが飛びついた。 「マリスのおかげよ! 」  マリスは、いくらか面食らいながらも、クレアを抱きとめ、微笑んだ。 「あたしは、なんにもしていないわ、ただ暴れてただけで。魔法が復活出来たのは、 クレア自身の力よ」 「ううん、マリスがいてくれたからだわ! マリスが側にいてくれるんだったら、 きっと大丈夫だって、そう思えたんだもの! 」  どうしたものかと戸惑っていたマリスであったが、素直に喜んでいるクレアを、 抱きしめた。  ベビードラゴンの治療が終わり、ケインは、カイルに支えられながら、起き上がっ た。 「確かに、マリスがいると、不可能なことも可能になってしまう気がする。彼女自身 は、単に戦闘が好きなだけだとしても」 「ああ、だよな」 「それにしても、カイル、よく魔空間に来てくれた。あいにく、持ってきてもらった のに、マスター・ソードは使わずじまいだったけどな。女子二人が凄過ぎて」  ケインとカイルは笑い合った。 「正直、俺は、始めは、自分が魔空間に入るなんて、考えられなかったんだが、 クレアが必死でさ」  カイルが、いきさつを語った。  真剣な表情で、クレアは言った。 「いつも頼ってばかりで、ごめんなさい。だけど、カイルにも、一緒に来て欲しいの。 私、魔法は使えなくても、魔族の気配はわかるわ。だから、あなたの援護をするか ら! 」 「俺には、ケインやマリスが経験してきたほどの強大な敵を、相手にしたことなんて、 ないんだぜ? ましてや、魔空間なんて……! 無理だ! 俺なんかが行ったって、 何も出来ねえ……」 「だからって、このまま、二人を見殺しにするの? 」  クレアの瞳には、涙がたまっていた。  カイルの瞳も、揺れる。 「お願い! 私、ケインとマリスの側に行きたいの。それだけじゃないわ。私は、 ……カイルの力も信じてるのよ。あなたの冒険者としての素質と、……伝説の剣を 持つのに、ふさわしい人だってことを……! もうあなたしかいないのよ、魔族に 対抗出来る、唯一の望みは! 」  彼女のその言葉は、彼の勇気を奮い起こした。 「……ってまあ、そんなところでさ。クレアに懇願されちゃあ、俺としては、断れ ないだろ? 」  と、カイルは、はははと笑ってみせた。 「確かに。それは、誰も断れないよな」 「それに、俺のことを、冒険者だって認めてくれて、伝説の剣を持つのにふさわしい 人間だ、とまで言われちゃさ。今からほんの数年前だが、俺も、純粋に、冒険に目覚 めた時があってな、その時の心情を思い出すと、自然と気合いが入ったぜ」  微笑んだケインは、そういうカイルを、改めて見た。 「カイル、……本当にありがとな! 」 「よせよ、ガラでもねえ! 」  カイルが、頬を赤らめた。 「とにかく、クレアの魔法が復活して、なによりだぜ! だけど、まさか、あの二人、 道外しゃあしないだろうな? 」  カイルが、おどけてみせると、ケインは笑いながら、抱き合っているマリスと クレアを見て、微笑ましい気分になっていた。 (あの時、マリスが来てくれなかったら、俺は、多分死んでいた。マリスには、魔族 の気配の読み方も教わったし、彼女から学ばなくてはならないことは、もっとある) (あと一年……。あと一年以内に、魔族の王と対戦するかも知れない。今の俺では、 まだまだ上級魔族には敵わない。ボルボを倒せたのは、運が良かっただけだ。気持ち だけじゃだめだ! もっと、俺自身が強くならなくちゃ……! )  群青色の瞳は、眩し気に、二人の少女を見つめ、ケインは拳を握り締めた。


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 リリドは惜しくも逃がしたが、魔空間にいた残りの魔族を倒したドラゴンたちは、 意気揚々と、始めに魔族を呼び出した荒野へと戻ってきた。  ドラゴンの王も、共を連れ、やってきた。  怪我をしたスグリも、首にできた一番ひどい傷跡は残ってしまったものの、全快し ていた。 『我々は、あなたがたの来訪によって、ドラゴン本来の性質に、甦ることができた。 なんとお礼を申し上げてよいやら』  王の言葉に、ケインは恐れ多く、頭を下げた。 「ま、俺たちの実力なんて、まだまだこんなもんじゃねえって。なんか、また困った ことでもあったら、いつでも呼んでくれよな! 」  カイルが威張って笑うが、クレアに耳を引っ張られる。 「それにしても、あの吟遊詩人の人ったら、まだ出てこないわ。ヴァルが戻るまで、 あたしたちに、ずっと、ここにいろって言うのかしら? それとも、まだやり残した ことが、あるとでも……? 」  マリスが首を傾げた。 『おぬしたちに、伝えなくてはならないことがある』  王の、思念の声に、四人は、改めて見上げた。 『マスター・ソードの魔石のことだが、六〇〇年前の勇者に渡した後、一匹の妖精が やって来て、そのドラゴン・マスターが去った後だと知ると、慌てて後を追って いったのだ。その時に、次回の魔石は、妖精族が預かることになっているのだとか、 言っていた』  四人は、ハッと顔を見合わせた。 「それは、本当ですか!? 」  驚くケインに、王は、大きく頷いた。 「ちぇーっ、なんだよ、もっと早く言ってくれればいいのにさー! 」  カイルが、骨折り損だと言わんばかりに、ほっぺたを膨らませた。 『それが、一〇〇年前の魔族との戦闘後に現れた、とある神の遣いを名乗る者に、 口止めされておったのだ。その者が言うには、次に現れるドラゴン・マスターが、 ドラゴンを、もとの勇敢な頃に戻す力があるようであれば、教えても良い、と』 「とある神の遣い……! 」  一行は、顔を見合わせた。 「おい、それって、あの例の吟遊詩人の仕業じゃねえか? 」  カイルが、うさん臭そうに、眉をひそめた。 「結局、魔石はここにはなくて、どうも妖精の国にあるみたいじゃない? それも、 信用できるかどうかは、わからないけど。だけど、なんで、わざわざそんなまわり くどいことするのかしらね? あたしたちを、担(かつ)いでるのかしら? 」 「う~ん、マスターも、結構そーゆーヤツだったからなぁ」  マリスとケインも、疑わしい顔で頷く。 「あの……、もしかしたら、私たちの試練のためかも知れないわ。実際、今回の戦い は、少なくとも、私にとっては、大きな励みとなったもの」  クレアが遠慮がちに吟遊詩人を弁護するが、三人には、聞き入れてもらえなかった。 「俺たちをここへ案内した吟遊詩人が現れるまで、もうしばらく、置いて頂いても、 よろしいでしょうか? 」  ケインが、ドラゴンの王を見上げる。 『おぬしたちには、ベビーも懐いておるようだしの。我らは、構わぬぞ』 「グルルル、ピーッ! 」  王の脇から、ベビーがよちよち走り出すと、はしゃぎながら、べろべろと、ケイン の顔を舐め回した。  カイルもベビーにじゃれつき、マリスとクレアは、笑って見ていた。  王の横から、スグリが、ゆっくりと進み出た。 「獣神様の巫女よ、おぬしの口づけが効いた。命の恩人よ、礼がしたい。私が人間の 姿に変身し、おぬしたちの旅に同行するのは、いかがか? 」 「へえ、人間の姿に! そんなことも出来るのか! 」  逸早く、カイルが目を輝かせた。  クレアもマリスも、感心するが、ケインの顔色が変わる。 「ちょっと待て。今、口づけって……? 」 「ああ、瀕死のスグリさんに、マリスが生命エネルギーを注いだんだよ。いつか見た ことあっただろ? それで、クレアを救ったのを」  カイルの説明を聞くうちに、ケインが動揺していく。 「じゃ、じゃあ、マリスがスグリさんに……! 」 「そうそう、チューしてたぜ」  ケインは、見るからに、ショックを受けていた。 「俺にはしてくれなかったのに、スグリさんには……。マリス、ドラゴンの方が好き なのか? 」 「何言ってるのよ、あんたが拒んだんでしょ? 」  両手を腰に当てたマリスは、不可解な顔をして、言った。 「だって、マリスに悪いかと……」  ケインは、今さらながら、痩せ我慢して格好付けたことを、激しく後悔した。 「それじゃあ、スグリさん、例えば、あたし好みの、超イケメン男子に変身すること も、出来るのかしら? 」  マリスが、スグリにウィンクする。 「容易(たやす)いことだ」 「ちょっ、ちょっと待てよ! 見た目が人間になったって、中身はドラゴンだぞ? 」 「あら、ケインだって、ドラゴンが好きでしょう? それに、あたしが、ずっと、 ドラゴンに会いたかったの、知ってるわよね? 」 「……まさか、ホントに……人間より、ドラゴンが好きなんじゃ……!? 」 「魔界の王子をペットにするより、ドラゴンの彼氏がいる方が、カッコいいわ! 」  マリスはウキウキとしていた。  ケインは顔面蒼白になり、立ち尽くしていた。  途端に、マリスが吹き出す。 「冗談だ」  スグリのセリフに、ケインは、がくっと身体中の力が抜けた。 「スグリさん、……そんな冗談なんか言う人だったっけ? 」  スグリは、笑ったみたいだった。  マリスも、クレアも笑った。 「ははははは、良かったな、ケイン! じょ、冗談だってさ! ははははは! 」  最も笑っていたのは、カイルであった。  腹を抱え、息も途切れ途切れな彼を、ケインが横目で見る。 「何が『良かった』だよ。笑い過ぎだぞ、カイル」 「お前、わかりやすいな! 」  カイルは、再び大笑いした。  それを、ケインは面白くなさそうに見ていた。  そのさなか、突如、ドラゴンたちの一角が、騒ぎ出した。  ただならぬ異変に、王も、ケインたちも、辺りを見回す。  ケインとスグリ、側近たちは、すぐさま、王を庇うよう取り囲み、警戒した。  そして、ーー!   ぼごおぉお!   マリスのすぐ後ろの土を掘り返し、いきなり、それは、現れた。  どす黒く、濃い緑色の混ざった血に全身を染め、ほとんど白髪と化した髪を振り 乱した、凶悪な人相の女ーーリリドであった。 「あ、あんた、まだ……! 」  マリスが振り向き様バスター・ブレードを薙ぎ払うが、リリドの方が一瞬速かった。  血の混じった白髪が伸びていくと、マリスを、あっという間に包み込んだ。 「マリス! 」 「マリス! 」  クレア、カイルが叫び、ケインも駆け出すが、マリスの身体は、乱れた白髪に、 丸く、虫の繭のように包まれてしまった。  恐ろしい、地獄の底から響いてくるような声が、伝わる。 『許さない、お前だけは……! 神の憑いた、お前だけは! 』  繭になったマリスを、怒りをあらわにした形相で見下ろすと、リリドの姿は、ふっ と消えた。 「マリスー! 」  ケインたちが叫ぶと同時に、ゴールド・ドラゴンが数匹、すさまじい風を起こし、 舞い上がった。 『リリドめ、こっちへ逃げたぞ! 』 『追え! 追うんだ! 』  ドラゴンたちは、空中へと、次々消えていった。  走って追うケインを、ベビーが乗せて、ドラゴンたちに続き、宙に消えた。 「お、おい、俺たちは、どうすればいいんだよー! 」  ケインの消えた空へ、王と護衛のドラゴンしか残っておらず、置いてけぼりに なったカイルが叫ぶが、何も返ってはこない。  隣では、クレアが、なすすべなく、心配そうに、おろおろと両手を揉み絞っていた。


マグマ

『待てリリド! 大勢の仲間を殺し、喰らったおぬしだけは、生かしてはおけぬ! 』  ゴールド・ドラゴンたちは、溶岩でできたような、赤茶色の岩山へと来ていた。  岩山は、真っ赤な夕焼け色に染まっている。  そこも、人間界とはまた違う風景であった。  上級魔族リリドには、自分に有利な空間である魔空間を造る力は、もう残っては いなかった。  変わりに、別の次元へと、逃げ込むのが精一杯であるようだった。  黒いマント姿で、大きな白い繭を引き摺りながら逃げている女の姿を、ドラゴンが 追う。 「なんて、熱いところだ。どこかで、マグマでも流れているのか? 」  ドラゴンには耐えられる温度らしく、平然と飛んでいるが、人間にとっては、焼け 付くような熱さで、堪え難い。  ケインには、空気までもが熱く、息苦しく感じられた。  突然、リリドが、悲鳴を上げて倒れた。  繭の中からは、バスター・ブレードを突き立て、マリスが破って出て来たのだった。 「このあたしを誘拐しようなんて、そうは行かないわよっ! 」  ばこばこと繭を打ち破ったマリスが、リリドに、バスター・ブレードを向ける。 「マリス! 無事だったのか! 」  ケインを乗せたベビードラゴンが、その上空で旋回する。  追いつめられたリリドは跪き、ぜえぜえと肩で息をした。  ゴールド・ドラゴンたちも、次々と、岩石の上に舞い降り、取り囲んだ。 『リリド、もはや逃げ場はないぞ。観念するのだ』  ドラゴンたちを背に、繭を踏み付けたマリスも、腕を組み、リリドを見下ろす。  リリドの戦闘能力は、ほとんどなくなっているのは、ドラゴンにも、ケイン、 マリスにも、わかっていた。  先の戦闘の時とはまったく様子の違う、疲れ果て、死させも覚悟している姿である。  だが、肩で大きく息をしていたリリドが、いきなり地面に両手をつく。  その途端、岩盤が、ぼこぼこと割れていき、リリドとマリス、ドラゴンたちの間に 割れ目が出来た。 『私を追いつめたからといって、いい気になるな。私は、お前たち、竜族の手になど かかっては死なぬ! しかも、ただで死ぬものか! 』  魔族の女は、立ち上がると、マリスに向かって、てのひらをかざした。 『獣神の巫女である貴様を、道連れにしてやる! 魔王様を封印した、獣神の籠を 受けているお前だけは、許さぬ! 神の憑いた我が身を呪いながら、死んでゆくが よい! 』  地面の割れ目が、一気に走っていくと、マリスの足元が陥没した。  それと、ドラゴンがリリドに襲いかかっていったのは、ほぼ同時であった。


衝撃

 リリドの最後の叫びであった。  ドラゴンたちの鋭い牙によって、身体はえぐられ、後に、黒い灰となっていった。  陥没した岩は、リリドの最後の魔力で、もろく崩れると、マリスは、真っ逆さまに 落ちていった。 「マリスー! 」  ケインの乗ったベビードラゴンが、必死に後を追う。  下降すればするほど、マグマが近くなっているのか、温度は上がり、ケインの身体 からも、ベビーの皮膚からも、汗が流れ出していた。 (マリス、死ぬなよ! 死なせるもんか! )  狭かった空洞は、急に開けた。  岩は崖になっており、そのずっと下方では、赤い溶岩が流れている。  岩と一緒に落下していくマリスが、見えた。 「マリスー! 」  ベビーの上からケインが叫ぶ。  ベビーはスピードを上げ、マリスに追いついた。 「ケイン! 」  その時、マリスの持っていたバスター・ブレードが、岸壁に当たった。 「あっ! 」  バスター・ブレードが、マリスの手から離れた。  その直前に、ケインの手が伸び、バスター・ブレードを掴むかに見えたが、彼が、 迷いもなく掴んだものは、マリスの手であった。 「バスター・ブレードが……! 」  マリスが手を伸ばす。  ケインも、もう片方の手を伸ばす。  ケインの手が掴もうという瞬間、大剣は消えた。 「……!? 」  二人は、目を疑った。


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