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~ 第6巻『魔の兵士』 ~


剣月青ライン  Ⅵ.『全力疾走』 妖精青アイコン1 ~ 野盗のリーダー ~  剣月青ライン

「あぁ~、だめだぁ。案の定、診療所は全焼しちゃってるよぉ! その周りを、黒い 服着た兵隊さんたちが、うろうろしてるぅ! 」  その間の抜けた声は、言わずと知れた、マリリンのものである。  空間の狭間で、一旦ストップし、ネックレスのようにぶら下げている小さい水晶球 を、見ているところだ。 「カイルとクレアは、いったいどこに……? 」  ケインとマリスは、顔を見合わせた。 「マリリン、軍服の男たちは、町中にはびこっているのか? そいつらのいない ところは、わかるか? 」  ケインに尋ねられ、マリリンが目を閉じ、水晶球に念じる。 「町中にいるよぉ! あんたたち四人の人相書きまであって、完璧『お尋ね者』に なっちゃってるよぉ! 」 「……ってことは、カイルたちは、まだやつらに見つかっていないみたいね。 マリリン、他の周辺の町はどう? 」  今度はマリスが尋ねる。 「門のところに、おんなじような人たちがいるよぉ。うわあっ、変なバケモノみたい なのを連れてるぅ! 」 「ふ~ん、随分、広範囲見張ってるのね」  例の組織が、彼女たちの想像以上に大きいことが表われている。 「カイルだって魔道士じゃないから、重傷のクレアを連れて、一気に遠くに行ける はずはない。俺たちの帰りを待っているだろうし、やっぱり、あの村からは出てない んじゃないかな」  ケインの言うことに、マリスも頷いた。 「それにしても、いったい、どこに隠れたのかしら? ……もしかしたら……!  あのカイルのことだわ。うまく、ウラをかいたのかも! 」 「ああ、そうかもな。そして、それは、俺たちにもわかりやすいところで」  マリスとケインが、嬉しそうに瞳を輝かせる。 「マリリン、村の周辺の、野盗のいる場所を探してくれない? 」 「野盗ですか? 」クリスが不思議そうにマリスを見る。 「ええ、お願い」  しばらく目を閉じていたマリリンが、顔を上げた。 「ああ、二人とも、いたよぉ! しかも、野盗たちの真ん中に! 」 「ええっ!? それって、まさか、野盗に捕まってるんじゃ……! 」  驚いたクリスは、思わず身を乗り出して、彼女の小さな水晶球を覗き込み、目を 凝らした。


剣ライン

「よぉ、おめえら、久しぶり! よくここがわかったじゃん」  ごうごうと大きく焚かれた火。周りには、人相の悪い、見るからに野盗の男たちが、 うろうろしている。  その前には、けろっとしたハンサムな顔があったのだった。 「カイル! 」 「無事だったのね! 」  ケインとマリスが走り寄る。 「ああ、もちろん。クレアも、ちゃんと無事だ。そこで寝ているぜ」  彼の親指が示す方には、寝袋に包まり、横たわっている美しい黒髪の娘の姿が あった。 「おめえらも、一緒だったのか」  カイルは、ケインとマリスの後ろで、ぼう然と立ち尽くしているクリスとマリリン を見た。 「カカカカカイルさん、あなた、野盗に囲まれたこんな場所で、よくそんな平気な顔 してられますね? お友達だったんですか? 」 「バカ言ってんじゃねーよ」  ビクビクしながら尋ねるクリスに、カイルが腕を組んで、ふふんと笑った。 「魔法剣によると、ここが一番安全らしいから、ここに居座ってたんだよ。と言って も、たったの一日だがな」  言い終わると、今度はカイルの口調は、真面目になった。 「魔道士の医者は、いなかったみたいだな」 「ああ。だが、マリリンちゃんも、心を入れ替えて、クレアを治してくれるんだって さ。さあ、マリリン、約束通り、お願いするぜ」  熱で火照(ほて)ったクレアの顔を、心配そうに見てから、ケインがマリリンの背を 押し、すぐ隣で見張る。 「あなたが正しく呪文を唱えてるかどうかは、あたしにはわかるんだからね」  もう片方の隣には、マリスがついた。  面白くなさそうなマリリンであったが、最後にはクリスにも念を押され、仕方なく 両手をクレアに向けた。  治療の呪文が唱えられる。  両手からは発光した薄い緑色の光は、クレアに注がれる。 「お頭、なんの儀式ですかい? 」 「うるせえ、黙ってろ」 「へ、へい」  野盗たちは、魔法を見慣れていないらしく、カイルに窘(たしな)められ、そわそわ しながら見入っていた。  マリスが祈るように手を組み合わせ、ケインもカイルも、静かに見守っている中、 ゆっくりと、クレアの瞼が開く。 「クレア! 」 「クレア! 」  彼女の面が、彼らを向く。  クレアの顔色は、赤みがおさまり、瞳も、もとの黒曜石のような輝きを取り戻して いった。 「はい、終わりぃ~」マリリンが手を引っ込める。 「クレア、気分はどうだ? 」ケインが喜びを抑えられない様子で、問いかけた。 「大丈夫? 」マリスは彼女の枕元に進み、彼女が起き上がろうとするのを手伝う。 「……ケイン、マリス、それに、マリリン、クリスさんも……? なんだか、私、 今まで気分が悪かったのが、すっかり良くなったみたい……。マリリン、あなたが 『治療』してくれたのね? ありがとう」  マリスに手伝われ、身体を起こしたクレアは、立ち上がり、周りを見渡した。 「おおっ! アネさんが復活した! 」 「すげえっ! 魔法でアネさんが復活したぞ! 」  野盗たちが驚きの声を上げている。 「アネさんて呼ぶな! 」ケインが顔をしかめた。 「サンキュー、マリリン。恩に着るぜ」  カイルが、ニッと笑って、マリリンの頭をぽんぽん叩いた。  マリスは嬉しさのあまり、クレアの首に抱きついた。 「良かった、クレア、本当に……」 「マリス……」  その様子に、マリスがどれだけ心配していたかが伝わったクレアも、マリスの背に 腕を回した。二人の瞳は潤んでいた。  ケインとカイルも、ほっとして、じゃれ合って喜んだ。 「おい、そこのおめえ! 」  気を良くしたカイルは、側を通ったモヒカン刈りの男を呼び止めた。 「俺の連れに、茶出せよ、茶! 」 「へ、へい。ですが、あいにく、茶は切れてまして、酒しかありませんで……」 「バカヤロー、その方が上等じゃねえか! さっさと持ってこい」 「へ、へいっ! 」  モヒカン男は、あたふたして消えた。  クリスとマリリンは、信じられないものでも見るように、目を見張る。  マリスがおかしそうに笑いながら、片目でカイルを見上げた。 「あなた、盗賊の親分役が、ずいぶん、板についてるじゃないの。この間のお芝居 みたい」 「こういうやつらは、扱い慣れてんだ。こいつら、力の強いヤツにはへつらうから、 俺の実力を見せてやったのよ」 「普段は、疲れることは、したがらないくせに」 「俺は、お前みたいに、がむしゃらに、こいつら殴ったりはしなかったぜ。ちょっと アタマを使って、新リーダーになっちまったってわけよ。下手に全滅させりゃあ、 デモン教の奴等にも気付かれるかも知れねえからな。奴等、まさか野盗のいるところ には、怪我人連れて行かないと踏んで、ここには、まだ現れてねえ。さすが、魔法剣 サマサマだぜ! 」  酒を飲みながら、カイルが、それまでのあらましを語った。  ソルダルムの村から逃れてきた医師の診療所では、ケインとマリスが出て行った 直後、カイルが深刻な顔で、医師と向き合っていた。 「私にはよくわからんのだが、……つまり、きみの剣の不思議な力で、ここが危険と わかる……というのかね? 」  中年の医師は、信じ難い表情で、カイルを見る。 「この感じは、いつもヤバイ時に現れるんだ。一刻も早く、患者を連れて、逃げた方 がいい。どうせ、重い症状の患者は、デモン教の薬欲しさに入信しちまって、いるの は軽症の者だけで、人数もそんなにはいないだろう? これは、一刻を争う問題なん だぜ。俺のカンでは、デモン教の奴等が、絶対何か仕掛けてくるはずなんだ」  いつになく真剣な彼の顔を、医師はじっと見る。 「先生よ、迷ってる場合じゃねえぜ。早く、患者と看護師たちを逃がすんだ。道中は 俺が護衛してやるから、皆で、野盗のいるダネン山へ行く」 「野盗だって!? そんなもののいるところを……! 」 「大丈夫だ、俺に任せておけ。いいか? あえて、野盗のいるという噂のところに 行くっていうのが大事なんだぜ」  カイルが片目を瞑ってみせた。  カイルの引率で、十五人あまりの患者と三人の看護師、医師は、二、三人ずつほど に分かれて、診療所の裏口から、目立たないように出て行った。  クレアをおぶったカイルが、先頭を進む。 「心配しなくても大丈夫だ、クレア。辛いか? もうちょっとの辛抱だ」  熱のある彼女は、痛む腹部を気にしながら、彼の背に揺られ、励まされていた。 「全員、付いて来てるみてえだな」  後ろを振り返り、しんがりの、フードを被った医師を見つけ、カイルがホッとして 呟いた。  しばらく進むと、行く手を阻むように、焚き火を囲んだ野盗の群れに出くわした。  患者と看護師たちは、カイルの片腕に止められると、その後ろで、恐怖のあまり、 声も出せないでいる。 「おいおい、こんな大勢で、どこへ行く気だぁ? 」 「カネ目のものは置いてってもらおうか。ついでに、命もな」  野盗たちの目が、ぎらぎらと光る。  患者たちは悲鳴を上げ、ますます脅え、退くが、カイルただ一人は、不敵な笑みを 浮かべていた。彼は、医師にクレアを預けると、堂々と進み出た。 「時間がないんだ。てめえらの頭はどこだ? 交渉したい」 「交渉だとぉ? ふざけんな! 」  どすっ!  斧を振り上げた瞬間、筋肉質の逞(たくま)しい手から斧が離れ落ち、男の動きは 停止した。 「時間がねえって言ってんだろ? 」  カイルが低い声になり、眉をひそめた。  瞬間で体重移動して喰らわせられた重い突きに、男は腹を押さえ、声もなく、 苦しそうに蹲(うずくま)ってしまった。 「被害を最小限に抑えてえから、頭と交渉してやるってのに、てめえら、全員死なな きゃわかんねえか! 」  鋭い眼光を放ったカイルが吠え、魔法剣を抜き、野盗の飲みかけの酒瓶を割った。  そんな彼は、クレアを始め、旅の一行も見たことはなかった。 「この俺の魔法剣で死にたいヤツは、前へ出ろ! 」  剣を握っていない左手が、いつの間にか取り出した黒い小瓶を上空に放り投げた。 「ファイヤー・ブレス! 」  小瓶を、空中で魔法剣が砕き、振り下されると同時に、炎が勢いよく、野盗たち 目がけて発射されたのだった。


炎

「ぎゃーっ! 危ねえっ! 」  混乱し、恐怖におののき、逃げ惑う野盗たちであったが、数人が軽い火傷を負い、 あとは、なんとか逃れられた。  それには、野盗だけでなく、医師や看護師、患者も、クレアまでもが圧倒された。 「……カイルが、炎の技を……!? 」  医師に支えられながら、クレアは驚愕(きょうがく)のあまり、目を見開く。 「き、奇術だ! 奇術に決まってる! 」  野盗のひとりが、無理に笑ってみせるが、指さす手も、声も、震えていた。 「ほほ~、この俺の技が、手品ごときだと思ってるヤツがいるとはな。手品か本物か、 どうやら、てめえの身を以(もっ)て知りてえらしいな」  カイルがにやりと笑うが、その切れ長の青い瞳に浮かぶのは、酷薄な笑いであった。 「ひっ! 」  思わず、野盗が引きつるほどの迫力だ。 「頭を呼べ! てめえらの頭と俺の一騎打ちを要求する! 俺が勝ったら、俺の言う ことを聞き、この人たちを、しばらくここに居させろ。俺が負けたら、お前らの言う ことを聞いてやるよ。仲間になってやってもいいし、……殺したかったら、それでも 構わねえ」 「……そ、そんな……! カイル……! だめよ、そんなこと! 」  クレアがよろめきながら進み出るのを、困惑しながらも、医師が止めた。  同時に、野盗と患者たちの間に、どよめきが走った。 「……とりあえず、お頭呼ぶか? 」 「……だな」  動揺しながら、野盗数人が首領を呼びに行くが、 「あっ、お頭が、いねえ! 」 「逃げやがったか!? 」  野盗たちの顔色からは、みるみるうちに、さーっと血の気が引いていく。  代わりに、カイルの表情は、ますます残酷な笑みへ変わる。 「だったら、副頭領はいねえのか? いや、俺と一騎打ちする気のある者なら、誰で もいいぜ? 」  尻込みをする野盗たちの中からは、とうとう誰も名乗りを上げず、降伏した彼らは、 カイルの条件を飲んだ。 「よーし、貴様ら、今日から、俺が、この盗賊団のリーダーだ! 文句はねえな?  間違っても寝首を掻(か)こうなんて、思うんじゃねえぜ? この魔法剣は、危険を 察知することも出来るんだからな。寝ている間も、俺たちに手を出そうもんなら、 遠慮なく、ぶった斬るからな! 」 「そそそ、そんな、滅相もねえ! 」 「お頭が逃げた今、あんたが俺たちの頭だぜ! 」  野盗たちは跪(ひざまず)き、武器を置くと、ぺこぺこと頭を下げた。 「それじゃあ、まずは、この人たちに、てめえらの毛布をよこせ」 「へい! 」  カイルの命令で、野盗たちは慌てて、寝袋や毛布を持って来た。  決して、整った環境ではなかったので、患者たちは、諸手を上げて喜ぶ、とまでは いかなかったが、ひとまず、デモン教の目から逃れられそうなことに、ホッとした。 「クレア! これで、やっと、しばらくは安心だぜ! 見てくれたか? 俺の勇姿 を! 」  普段の無邪気な笑顔に戻ったカイルが、クレアのところへ駆けつけると、倒れて いるクレアを、医師が支えていた。 「貧血だ。病人の身には、ちょっと、刺激が強かったのかも知れんな」 「ええっ!? そんな!! 」  カイルが血相を抱えて、あたふたする。 「大丈夫だ。しばらく横になっていれば、直(じき)に目を覚ます」 「……って、わけさ」  笑いながら、カイルは酒を飲み干した。  胡座(あぐら)をかいて座っている彼の横から、モヒカン男が、そろそろと酒を注ぐ。  クリスとマリリンは、地べたに座り込み、肩身が狭そうに、きょろきょろしている。 「それで、お前、どうやって炎の技を? 」  ケインが、他の野盗に酒を注がれながら、興味深い目を、カイルに向ける。 「ああ、あれな。揮発性の爆薬を、先生に頼んで作ってもらったんだ。アルコールに 接触すると、ちょっとした爆発が起こるくらいの。だから、パフォーマンスも兼ねて、 先に酒瓶割ったのさ。魔法剣の『浄化』は、風の効果もあるから、爆薬瓶を割ると 同時に、『浄化』を発動させたんだよ。それで、炎の技に見せかけられたってワケだ」  カイルがウィンクしてみせた。 「はあ~! カイル、お前って、すごい勝負師だな! 」  ケインは、本気で感心していた。 「よくそんなこと思い付いたわね」マリスも目を丸くしている。 「まあ、『いかに小細工して強く見せるか』にかけては、昔からアタマ使ってたから な」  カイルは、はははと笑った。


魔法剣ライン

 翌日、カイルの提案により、マリリンの空間移動の術で、医師や患者たちを、そこ からは離れた国へ、デモン教とは無縁の地へ、連れて行くこととなった。  もちろん、ズルが出来ないよう、マリスも同行する。 「あんたたちには、逆に、世話になってしまったな」  ソルダルムの医師は、少しだけ照れ臭そうに笑った。 「いや、ほんの恩返しだよ。あんたがいなかったら、クレアはもっと苦しんでただろ う。感謝してるぜ! 」  カイルがウィンクする。  ケインもマリスも頭を下げ、礼を言う。 「ありがとうございました。本当に、お世話になりました。このご恩は、……決して 忘れません……! 」  黒曜石の瞳を潤ませたクレアは、深く頭を下げた。  その様子に、医師も、目尻を拭う。 「いや、あんたが、こうして元気になって、動けるようになったのを見られて、 私こそ嬉しいよ。ただ、魔法治療したにも関わらず、まだ腹部に残った傷跡が気に なるが……熱は下がっているし、元気に動けるなら、細菌の方はもう問題ないだろう。 傷跡は、徐々に薄くなっていくだろう」 「はい」  町娘の衣服の上から、クレアは腹部を庇うように手を当てる。  彼女の表情が、少し曇った。  一行が別れを惜しんだ後、医師と看護師たちを、マリリンの魔法で送り届けると、 カイルは、適当に目についた者を野盗のリーダーに任命し、いよいよ、一行が、 マリリンと供にこの町から脱する。  その予定であったが。  クレアが思い切って、打ち明けた。 「傷のところ、自分でも回復魔法をかけてみたんだけど……」  そう言って、試しに治療呪文を唱えてみせるが、なにも起こらない。てのひらから は、わずかな光すら発していなかった。 「や、やっぱりだわ……! どうして……? 」  信じられない様子で、両の手のひらを見る彼女を、 「あぁ、スランプねぇ」  マリリンが、くりくりした目で見る。 「マリリン、ちゃんと治療したもん。元通り、元気な身体になって、魔力だって復活 してるはずなのにぃ、魔法ができないってことはぁ、スランプなんじゃない~? 」 「スランプですって……!? 」  クレアが愕然とする。 「本番ともなれば、またカンが戻るかも知れないわ。とりあえず、『小物』でも倒し に行ってみる? 」  マリスが明るく言った。  夜になり、皆で近くの草むらへと入って行くと、ダーク・シャドウを始めとする 下等モンスターたちが、うようよと目の前に現れた。 「さあ、クレア、ここなら遠慮はいらないわ。思いっきりブチかましちゃっていいの よ」  黒いトカゲのようなもの、黒いもやなどの妖魅たちが、様子を伺っている。  クレアがてのひらをかざすが、普段よりも、潔(いさぎよ)さが見えない。  呪文を唱える。  なにも起こらなかった。 「ああっ! 」  がくっと彼女の両膝が地面につき、両手は顔を覆(おお)った。 「クレア……」  心配になったマリスも、しゃがみこむ。 「できない……! どうしても、できないみたいなの。どうして……! 」  マリリン以外、どうして良いかわからずに、一同顔を見合わせた。  ひゅうううううっと、風が吹いてゆく。  クレアは、まぎれも無く、スランプに陥(おちい)っていたのだった。  彼女が魔法を使おうと念じると、どうしても、頭の中に、デモン教のソルジャーに 襲われた時の恐怖が、フラッシュ・バックする。  戦いの中で初めて負った怪我が重傷であり、かの不気味な強敵によるものであり、 その後も、痛みの続く、辛い時間を過ごしてきた。  それまでの敵に対する彼女の闘争心とは、知らない者の強みが大きかった。  いわば、彼女は、初めての壁に、ぶつかったのであった。


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