Book6看板 Dragon Sword Saga6 〜5.-2〜
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~ 第6巻『魔の兵士』 ~


剣月青ライン  Ⅴ.『蒼い紋章』 妖精青アイコン2 ~ 戦闘鑑賞 ~  剣月青ライン

 マリスがサンダガーの後についていくと、木々の生い茂る林が見えてきた。 『こっちだ』  サンダガーに、マリスは腕を引っ張り上げられると、うねっている景色の中に、 そこだけがはっきりと映る森林の中を、二人は、すーっと浮かび、進む。  未だ、獣神の結界の中にいることは、彼女には感じられている。  彼の結界のおかげか、目の前の木を通り抜けられた。ただ、その度に、瞬間では あったが、木の中身、細胞の粒子が、マリスの身体の中を通って行くような、奇妙な 違和感があった。 (実際には逆で、あたしの精神だけが行動し、樹々の中を通り過ぎているのでしょう けど)  それから、いくらも行かないうちに、獣神の結界は、宙を浮いたまま止まった。  マリスは目を見開いた。  目の前には、先の魔道士と、ケインとが、距離を取り、向かい合っていたのだった。  魔道士の手には、蒼い宝玉のついた杖が握られていた。  ケインは、背中の大剣を、まだ抜いていない。 「先程は、意表をつかれた。『光速』で飛んでいるところに、まさかバスター・ ブレードで結界を破るとは……。しかも、お前も、王女も、よく生きていたものだ。 常人では、考えられぬ」  魔道士が、冷たい視線の中にも、少々感嘆するような、だが蔑(さげす)むようにも 取れるような言い方をした。 「王女だって、よくわかったな。さっきは、気付いてなかったみたいだったのに」  ケインが、ふっと笑う。 「水晶球で貴様たちの行方を探しているうちに、わかったのだ。都合のいいことに、 貴様たちは、今、ヴァルドリューズとは離れているようだな。彼のことは、いくら 探しても、見つけられなかった。完全な別行動らしい。そして、お前たちの仲間の ひとりは、先程の秘密結社に重傷を負わされてしまったようで、まことに遺憾である な」 (イカンだなんて、思ってもいないくせに! )  マリスは心の中で悪態を吐いた。  ケインの瞳が、僅かながら、光った。  魔道士は、それを認めた上で、話を続けた。 「そこで、ものは相談だが、マスター・ソードの使者よ、どうだ? 王女を、私に 引き渡せば、ひとまず貴様のことは見逃してやってもよいぞ」 「なんだと? 」  ケインは、胡散(うさん)臭そうに、魔道士を見た。 「そればかりか、お前の仲間である重傷の娘のことも、治してやってもよい。どうだ、 悪い条件ではあるまい? 」  魔道士の細い目が、一層細められ、うっすらと、彼に笑いかける。  ケインが、慎重な顔になる。 「大魔道士さまにとっては、マスター・ソードよりも、マリス王女の方が、優先って わけか」  さっと、マリスの身体に緊張が走る。  その隣にいるサンダガーは、腕を組み、二人の様子を静かに見下ろしている。 「わかったら、王女をこちらに引き渡してもらおうか。たかが小娘ひとりで、お前を 見逃してやるばかりでなく、仲間の治療もしてやるというのだ。貴様にとっても、 大事な仲間なのではなかったかな? 」  ケインの瞳が、ピクッと揺れた。 「案ずることはない。王女を捕らえたところで、大魔道士様は、何も殺そうというの ではないのだ。ただ、その異様に高い魔力と、その影に潜んでいる獣神の存在に、 大変な興味を抱かれているのだ」  マリスの鼓動が、速くなった。  ケインが断れば、魔道士との戦闘となり、倒されるようなことになれば、マリスも 彼も、蒼い大魔道士のところへ直行となる。そればかりか、クレアは重体のままで ある。  マリスの見たところ、魔道士は、かなりの上級者だった。それは、ケインも、同じ 見立てであることだろう。  伝説の剣が、上級の魔道士と、どこまで太刀打ちできるものなのか。  ケインの本当の実力は、マリスにもわからない上に、クレアのことを引き合いに 出されては、彼らの弱みに、完全に付け込まれていた。 (ああ、ヴァル……! あなたがいてくれるというだけで、こんなに違うなんて…… ! )  マリスは、これまで、ヤミの魔道士も、ヴァルドリューズを警戒していたため、 迂闊に彼女にも手を出せなかったということにも、気が付いたのだった。  それも、ゴールダヌスの計算のうちでもあったのだろう。ヴァルドリューズは、 その存在だけでも、彼女を守っていたのだった。  マリスの心の中では、さまざまな葛藤(かっとう)が渦巻いていく。 (ヴァルさえいてくれれば、クレアを治してやるなんて言葉に、こんなに動揺させ られることもなかったのに……! )  ある考えが、ふと頭の中をよぎる。 (……あたしが行けば……あたしが、蒼い大魔道士のところへ行くだけで、クレアは 治るし、ケインだって、無駄な争いをしなくてよくなるし……あら? )  マリスが、まじまじとケインを見ると、マスター・ソードがない。  彼は、バスター・ブレードを手にしてはいるが、いつも腰に下げているマスター・ ソードが見当たらないのだった。 (どういうつもりなのよ、ケイン? マスター・ソードは、どうしたのよ? )  マスター・ソードの魔法攻撃であれば、上級の魔道士と渡り合えるはずだ。  それどころか、ダーク・ドラゴンの力であれば、同等以上の威力を発揮出来たはず。 (どういうわけか、マスター・ソードがないんだったら、この勝負、どう考えても、 ケインには不利だわ。……やっぱり、あたしが大魔道士のところに行くしか……! ) 『おい、なに考えてんだよ』  サンダガーが、マリスの頭をコツンと小突いた。 『ヴァルドリューズがいなくて心細いのは、何も、おめえだけじゃねーんだぜ。 みんな、そうさ。おめえらお子様だけじゃ、なんにも出来やしねえんだからよ。例え、 マスター・ソードを手に入れられたあの男でも、魔石がまだたったの一つじゃな。 三つとも全部そろってこそ、本来の威力を発揮出来るってもんだが。  だが、あのバスター・ブレードって剣は、かなりのモンだぜ。それも、使い手に よるがな。どんなに素晴らしい武器でも、持ち手が使いこなせるかどうかにかかって るんだからな』  緑色の吊り上がった切れ長の目が、マリスを見下ろした。 『不利な条件でも、あの男は、おめえとは違うことを考えてるみてえだぜ』  マリスは、サンダガーを見上げてから、ケインと魔道士を見直した。 「こっちの事情は、水晶球で、すべてお見通しか。クレアを治してくれるってのも、 なかなか痛いところをついてくれるじゃないか」  ケインが、フッと苦笑いをした。 「だがな……」  その目が、再び引き締められる。 「俺にしてみれば、クレアもマリスも大事な仲間だ。片方を売って、片方だけを助け ようなどと、ましてや、自分まで助かろうなんて思っちゃいない。それから……」  魔道士を見つめる瞳は、さらに強い光を浮かべた。 「俺は、そういう卑怯な条件を出すヤツは、嫌いなんだ」  言い終わると、彼は、魔道士の正面から、バスター・ブレードを構えたのだった。 「まったく、何考えてんのよ、ケインたら! さっさとあたしを引き渡せば済むこと でしょう? あたしだって、おとなしく捕まったままでいるつもりはないんだから」  マリスの声は、ケインにも魔道士にも、届いてはいない。 『なーに強がってんだ。本当は嬉しいくせに』  サンダガーが、ニヤニヤしている。 「なによっ! 」 『いつも強い強い言われてたおめえは、人から大事にされるこたぁ滅多になかった もんなぁ。一人でもなんとか出来ると思われて。かわいげのねえ、おめえや巫女の ねーちゃんのことを、少なくとも、仲間だと思ってるあの男は、俺様からすりゃあ、 神より心が広いぜ』 「なによ、それ」  マリスは、頬を膨らませて、サンダガーをちらっと睨んでから、戦況を見守った。 「……そうか。せっかく、お前たちにとっても、有益な取引だと思ったのだが、残念 だ」  魔道士の青白い顔に、浮かんでいた笑みが消えた。  そして、宝玉の杖を、前に構えたのだった。 「させるか! 」  呪文の途中で、ケインが飛び出す。  ガキッ!   剣と杖が交差する。  魔道士の周りに出来始めていた薄い膜が、シュッと消える。 「そうであったな。その剣は、結界をも破れるのだったな」  結界を裂かれた時にダメージを受けたのを思い出し、魔道士自ら結界を解いたのだ。 「ならば、これはどうだ」  男の目が細められたと同時に、杖を握っていない方の手が、ケインに向けられた。  ケインの目が見開かれる。  バチバチバチッ!   至近距離からの電撃球を、瞬時に大剣で回避する。  魔道士の杖から、雷が発生したように、電光の塊が飛び出し、薄暗い森に、光を 振りまきながら飛び交った。  火球などは、呪文を唱えなくとも発動できる魔道士はいるが、それよりも、ランク が上の電撃球を、一度に発することのできるその魔道士は、かなりの上級者と言えた。  魔道士が、すっと、静かにケインから離れた。  電撃の球だけが、バチバチと放電しながら、ケインに一斉に襲いかかっていく。  バスター・ブレードが大きく一振りされると、剣に触れていない電光も、大きく 火花を散らし、跳ね返り、シュボッと消滅した。  四方八方から彼を襲った光の球は、剣の風圧だけで、全て消えていた。 「ほほう」  魔道士の目が鋭くなった。 「そのバスター・ブレードも、なかなかの剣ではあるな。マスター・ソードとともに、 その剣があることを、大魔道士様が恐れておられるのが、わかる気がするぞ」 (剣だけじゃないわ)  バスター・ブレードを使ったことのあるマリスには、わかっていた。  あの威力が、決して剣の力だけではないことを。 (サンダガーの言う通り、剣の力を発揮できるのも、使い手の実力)  彼女は、食い入るように、ケインと、彼の大剣とを見つめる。 「これならば、どうだ」  魔道士の突き出した杖の宝玉から現れたのは、巨大な東洋龍であった。  全身が雷でできているかのような、凄まじい電光を放ち続けている。 「あいつ、雷球でケインを襲わせている間に、あんなものの召喚呪文を唱えていた のね! 」 『ヤツは、雷系統の魔法が得意らしいな。通常の魔道士の数段上の技まで、楽に こなしてやがる。炎の技よりも、当たればダメージは大きい。さーて、あの小僧は、 どうするかな』  サンダガーは面白そうな顔で、見入っていた。  光の東洋龍は、うねうねと、低く浮かんでいる。全長は、人間の五倍はあり、細身 に見える横幅も、倍はある。  バチッ……バチッ……!   時々大きな火花を散らす。  巻き付かれれば、致命傷は免れない。 「せめて、マスター・ソードだったら、あの東洋ドラゴンに太刀打ち出来たかも知れ ないのに……」  マリスは、やきもきしながら、見守る。  ケインは表情も変えず、大剣を構えていた。 「東洋系の光龍か。ちょっと厄介だな」  薄暗い森の中での、その龍の光は強過ぎた。  ケインの瞳が、眩しさに耐えかね、僅かに細められる。  魔道士は、その一瞬の隙をついた。  光龍が舞い上がり、ケインに向かい、雷を吐き出した。  大剣に当たり、金色の火花が大きく散る。  すかさず別の方向からも、それ自体が剣であるかのような雷が、まっすぐにケイン 目がけて飛ぶ。  ケインは、身体の向きを変えず、薙ぎ払った。 『俺様の雷の術に近いな。あの魔道士、おおかた、俺様の強さに平伏し、参考にでも したんだろうぜ』  サンダガーは、光龍が気に入ったようで、感心していたが、魔道士が彼を参考に するはずはない、とマリスは思っていた。  光龍は放電を続け、雷攻撃の手も休めず、上空から徐々にケインに向かい、曲がり くねりながら、舞い降りてきていた。  じりじりと、獲物を追いつめるように。 「ケイン、気を付けて! 敵は、もうすぐ真上に来るわ! 」  聞こえていないとわかってはいても、マリスは叫ばずにはいられなかった。  龍の速度が速まる。  自ら巨大な雷と化し、ケインに向かい、急降下していった。  落雷のごとく地面に直撃し、ケインを貫いたように見えたが、寸前で、彼は大きく 飛び上がっていた。  そして……!   音はなかった。  光の龍の動きは止まっていた。  マリスも、蒼い大魔道士の部下である魔道士も、目を見張る。  既に、大剣は振り下ろされた後だった。  全体に縦に割れ目が生じると、実態のなかった雷の集合体は、パーッと、当たりに 飛び散っていったのだった。  それと、ケインが地面に降り立ったのは、同時であった。 「光龍の欠点は、『眉間』だ。本来の龍の威力はこんなもんじゃない。お前が、操り 易いように、魔道で手懐(てなず)けてたから、人間に対しての警戒もそんなに見えな かった。だから、意外と簡単に仕留められた」  バスター・ブレードの峰を、肩にかつぎ、ケインは魔道士を見据えた。 「……なんということだ……! あの光の龍が……いとも簡単に……! 」  魔道士は、半ば、ぼう然と、ケインを見ていたが、新たな呪文を唱え始めた。  それを見つめるケインの目は、冷静だった。デモン教のソルジャーを相手にして いた時と同じく。 (……そっか。ケインは『ドラゴン・マスター』って呼ばれてた。ドラゴンのことに 詳しいんだわ! )  ……どくん……どくん…… (これは、もしかしたら、いけるかも知れない……! 面白い戦いが、見られるかも 知れない。いいえ、見てみたい……! )  マリスの中で、血が騒いでいた。 『あの男の言う通りだぜ。あの光龍は、確かに警戒心がなかった。でなきゃ、迂闊に アタマは敵に近付けないぜ。あれは、なかなかいい剣じゃねえか。さすが、強さを 誇る巨人、モベット族のモンだけある』  マリスの隣で、腕を組んでいるサンダガーは、満足そうに笑った。  魔道士の杖の宝玉から、しゅうしゅうと煙に巻かれて登場したのは、今度は、 大きな一つ目をした魔族であった。  全体が濃い緑色のヒト型のものは、頭全体が目でできているほど、その黄色い目は 大きく、不気味に緑色に血走っていた。頭ばかりが大きく、首らしきものはなく、 なで肩の、長い腕をだらりと垂らし、足は細く、曲がっている。背丈は、人間の子供 くらいしかない。奇妙な動きで、ケインに近寄っていく。 「魔族を召喚したか」  ケインの油断のならない目が、その魔族を追う。  『ひとつ目』が、サアッと、ケインの前に躍り出た。  バスター・ブレードが大きく薙ぐ。が、魔族の姿はない。  瞬時に、彼の後ろへ回っていた。  どかっ!   ケインが振り向く前に、魔族の拳が突きが放たれた。  突き飛ばされたケインが、体勢を立て直す間もなく、『ひとつ目』の姿は消え、 またすぐに、彼の後ろに現れ、今度は蹴りを入れた。  小さく呻き声を上げるケインを、『ひとつ目』は、消えたり、現れたりし、神出 鬼没に攻め立てる。 「あいつ、空間に隠れてるわ! 」  魔族は、空間の移動は、魔道士よりも自由自在であった。 「あれじゃあ、気配を読んでる時間はないわ。あたしやクレアみたいに、自分の魔力 が高ければ、あいつの魔力を読むことは出来るけど、ケインは……! 」 『ま、普通の人間にゃ、無理だな』  人事のように、さらっと答えるサンダガーを睨んでから、マリスは、心配そうに、 戦況を見守る。 「こいつ……! 」  ケインが狙いをつけて大剣を振り回すが、不格好な『ひとつ目』は、ひょいっと 軽々飛び上がり、躱(かわ)している。おまけに、ちょろちょろと、すばしっこい。  そして、何度目か、彼の後ろに現れた時、大きな目から、炎を発射させたのだった。 「うわああ! 」  火だるまになったケインが、地面をのたうち回る。 「ケイン! 」  思わず駆け出すマリスだが、数歩で、サンダガーの結界に阻まれた。 「ふふふふふ……! 」  魔道士が、その様子を、笑いながら眺めている。  炎は、すぐに消えた。  ケインが呼吸を整えながら、大剣を支えに、起き上がる。 『あの魔族は、低級だ。本物の火じゃねえから、火傷することもねえが、炎に包まれ ている間、人間は、呼吸ができねえ』 「シケたヤツだと思ったら、結構、厄介かも知れないわ」  マリスは、両手を握り締め、ケインを見つめた。  ケインが、ハッとして横を向き、身体をのけ反らす。途端に、そこから、先と同じ ような炎が吹き出した。  だが、よけた後に、別方向から来た雷が、ケインに当てられた。  魔道士の杖を持っていない方の手が、掲げられている。  すかさず、魔族が消えたり、現れたりしながら、またしてもケインを火だるまに 追い込む。  炎に包まれたケインは、呻きながら、とうとう両手を地面に着いた。 「ふふふ、どうだ、苦しいか? 楽になりたかったら、王女の居場所を教えろ」 (……あたしの居場所……ですって? )  マリスは、魔道士とケインとを見比べた。 「王女の魔力は、どいういうわけか、感じることができない。水晶球でも探せなかっ た。貴様、どこへ隠した? 毒の攻撃を受けていては、魔法も使わずに復活すること は有り得まい。王女だけ逃げたとは考えにくい。さあ、どこへ隠したのか、吐いても らおうか」  ケインは答えず、苦し紛れに、バスター・ブレードを一振りした。  風圧で、彼を包んでいた炎が消えた。 「……だ、誰が……言う……もんか……! 」  乱れた呼吸を必死に整えながら、ケインが魔族目がけて剣を振る。  魔族は、ひょいっとよけると、再び、彼の後ろに現れ、炎を浴びせる。 「言え。言わぬと、もっと苦しい目に合うぞ! 」  魔道士が向けた左手からは、またしても雷の術が、ケインを襲う。  電撃の光が強過ぎるせいで、炎に包まれた彼の姿は、マリスとサンダガーからは、 見えない。 「サンダガー! 」  マリスは隣を向いた。 「あたしは、いったい『どこ』にいるの!? こんなところで、今こんなことしている 場合じゃないんじゃないの!? 」  サンダガーは緑色の瞳を、冷ややかに、彼女に向けた。 『今から、おめえが現実世界に戻ったところで、どうしようもねえだろ。おめえは、 まだ怪我してんだからよ』 「なんですって? だったら、早く治してよ。このままじゃ、ケインが……! 」 『だから、お前が行ったところで、足手まといなだけだろ? 』  マリスは、ぐっと拳を握りしめた。 「だったら、なんで、あたしに、こんな場面見せるのよ! 仲間が苦しんでるところ を、黙って見てろって言うの? 」  目尻に涙を浮かべた、真剣なマリスに対し、サンダガーは、きょとんとした顔で 答えた。 『俺様は、バトル・シーンが好きなんだ。悪いか? 』  マリスが拍子抜けする。 「……それだけ? それだけのことで、あたしに見せたの? あんたの悪趣味に、 付き合ってる暇はないわよ! 」 『おっ、見てみろよ、マリス。あの男、なんだかヤバそうだぞ! 』  獣神は、心配するどころか、面白そうに言うのだった。  マリスは余計に腹を立てた。 「ちょっと、ヒトの話聞きなさいよ! 今すぐ、あたしを、元に戻すのよ! これ 以上、黙って見てることはできないわ。早く、ケインのところに行かなくちゃ!  回復に時間がかかるって言うんなら、回復してくれなくたって構わないわ! あたし は、ケインを助けに行く! 」  真面目に言うマリスに対し、獣神は、笑いながら言った。 『わかった、わかった! いやあ、おめえが行くまでもねえと思ったもんだから、 つい見入っちまったが、しょうがねえ。そろそろ戻してやっか。ゆっくり眠って りゃあ、回復にもなったってのによぉ』  サンダガーは、乱暴にマリスの腕を掴み、凄まじい勢いで、結界を移動していった。


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