Book3看板 Dragon Sword Saga3 〜Ⅵ.−2〜
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~ 第3巻『砂漠の謎』 ~

剣月黄ライン  Ⅵ.『砂漠での戦い』  〜 2 〜  剣月黄ライン

 どぼふあっ!   その時、強い風が地面をえぐった。  サラマンダーの巨体は、何かで突き飛ばされたように、一瞬で弾き飛び、砂にめり 込んだ。 「ヴァル! 」  マリスの歓喜の声が響く。  ケインのすぐ後ろの空間が揺らめくと、そこには、ヴァルドリューズが姿を現した のだった。 「おーい、ケイン、マリス、大丈夫だったかー!? 」  舞い上がる砂煙の中から、カイルとクレアの乗ったダグラと誰も乗っていないダグ ラがやってきた。 「き、貴様、仲間がそんなにいたのか!? 」  プーが、素っ頓狂な声を上げた。  ケインの隣に来たヴァルドリューズは、ちらっと、プーの乗るゴーレムを見上げた。 「ヤツは? 」 「ああ、昔の知り合いだ。どうやら、『蒼いじいさん』の一派らしい」  ヴァルドリューズの瞳が、一瞬鋭く細められた。 「ヤツ自身は、まだ駆け出しの魔道士なんだが、あのゴーレムは、上級魔道士の作っ たものだと言っていた。剣で斬ってもすぐにくっついてしまうんだ」  ケインが話し終わるか終わらないうちに、巨大トカゲが砂の中から、むっくりと 起き上がる。 「ゴーレムは私がなんとかする。魔獣は、お前が倒せ」 「あんなデカイ魔獣を、俺ひとりで!? 」  思わず、ケインはヴァルドリューズを見返した。 「どうした? お前ひとりでも、マリスを魔獣から守ってやるのではなかったか? 」  彼の静かな声は、挑発しているかのように、ケインには思えた。 「……そうだったな」  ケインは、手にしているバスターブレードに、ぎゅっと力を込めた。 「それではない。マスターソードを使え」  落ちているマスターソードを拾って、ヴァルドリューズが差し出した。  バスターブレードを背中に担ぎ直し、戻って来たマスターソードを両手に握り締め、 ケインは、サラマンダーに向かって構えた。 「それは、あたしの獲物よー! サンダガーに食わせるんだから! 」  マリスのヤツ、この期に及んで何を言ってるんだと思いながら、ケインは、大トカ ゲに向かい、斬り込んでいった。  サラマンダーは、さすがに砂漠慣れしていて、ゴーレムよりも、動きが敏捷だ。  ケインが、フェイントをかけても、すぐに方向転換が出来る。  深い砂場を走り回らなくてはならない人間の方が、断然不利な状況には違いなかっ た。  それでも、一瞬の隙を見つけ、ケインは魔獣の振り翳す鋭い爪目がけて、一気に 斬りつけた。  しゃあああぁぁぁあああ!   三本の指先は、それぞれ飛び散った!   そこから不気味な緑色の血液が、ぶしゅ~と勢いよく流れ出る。  牙だらけの口は天を仰ぎ、舌もちりちりと伸び上がっていく。  その間にも、ケインは、魔獣の白い腹の下に滑り込み、斬りつけていった。  魔物特有の血が、白い腹からも吹き出す。緑色のぶよぶよした内蔵が、割れた腹か ら覗く。  彼は、その場から脱出し、倒れるのを見届けようとしたのだが、 「ケイン、よけて! 」  マリスの声が聞こえたような気がした。  と同時に、サラマンダーの口から炎が吐き出された!   人ひとりなど簡単に包み込んでしまうほど、大きく、勢いもある炎の渦が、ケイン を襲った。  マスターソードを迫り来る炎に向けて突き出す。  しゅるるるるるる……!   炎はすべて、マスターソードの中に吸収されていった。 (良かった。マリスに剣を使われても、中のダーク・ドラゴンは逃げなかったみたい だ)  ちらっと、剣の柄を見て、ケインは、わかっていたことでも安堵した。 「むうぅぅ! やはり、恐るべし、マスターソード! 」  プーの声だった。 (あいつは、きっと、魔石を三つとも揃えたマスターソードのままだとでも、思って いるんだろう)  炎を吐き続けるトカゲの術を、次々と、難なく吸い込んでいくマスターソード。  ダーク・ドラゴンも喜んでいるのか、剣の中で、勢いよく、くねりまわっている 感じが、ケインにも伝わる。 「そろそろ、反撃させてもらおうか」  サラマンダーから、再び発射された炎目がけ、ケインがマスターソードを向けた。 『剣に棲(す)まいし黒き竜――ダーク・ドラゴン――よ。紅(くれな)いの竜に、その身 を映(うつ)せ! 』

 
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 剣先から現れた、西洋竜を象(かたど)った黒い影は、瞬時に赤々と燃え盛った。  渦巻く炎に、まるで生きたドラゴンのような炎が激突する!   炎のドラゴンが、炎の渦を喰らうように、二つの炎は絡み合い、周囲を赤々と照ら す。 「レッド・ドラゴン――!? 」  マリスとカイルが同時に叫ぶ。クレアは、驚きのあまり、声も出せなかった。  ヴァルドリューズの瞳は、何かを確信したように、微かに光る。  炎の竜が渦を吸収し、サラマンダー本体にも襲いかかると、もはや、サラマンダー に逃げる術(すべ)はない。  レッド・ドラゴンに絡めとられた巨大トカゲは、跳ね上がりながら、なんとか飛び 退いたが、口先から腹にかけた全身の半分が焦げ、パリパリと、皮膚が鱗(ウロコ)の ように割れ目が出来、剥(は)がれかかり、激痛に、のたうち回っていた。 「すごいわ……! マスターソードって、炎の技も出来るのね!? 炎系の得意な サラマンダーにさえダメージを与えるなんて——! 」  捕らわれの身であるマリスが、そんなことは一切忘れているかのような、感心した 声を上げた。 「ふふん、あんなのは、ほんの序の口だ。あの剣は、私の呼び出したデモン・ビース トですら、一瞬にしてやっつけてしまったくらいなのだからな! 」  プーが、誇らし気に、威張って見せた。 (お前って、一体……? ホントに敵なのか? )  時々、ケインは疑問に思う。  それまで、ゴーレムに水の呪文を浴びせる様子のなかったヴァルドリューズに、 動きが現れた。  彼の指が三角印を作り、その中に、ぼわーっと金色の光が生まれていた。  マリスの周りにも、白い煙のようなものがしゅうしゅうと集まっている。  その光景を、一行が目にしたのは、二度ほどあった。 (まさか、獣神『サンダガー』!? )  プーの目の前で、マリスの身体は、金色の光に包まれたかと思うと、巨大化が始ま った!  「な、なんだ!? 」  ゴーレムの肩の上で、プーが驚いていた。  マリスを掴んでいたゴーレムの指が、どれもみしみしと軋(きし)みを立てると、 大きな罅(ひび)が入っていったのだった。  ばごほぼふぁおっ!  「ぎゃーっ! 」  ゴーレムの手が崩れる音と、プーの叫び声は、殆ど同時だった。  金色の光は、ますます巨大化していき、ゴーレムと同じ位の大きさにまでなって いった。  そして、その金色の光の塊は、ヒトのような形へと変貌していったのだった。

 
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「ふはははは! お久しぶりだぜーっ! 」  聞き覚えのある声が、響き渡る。  金色にたなびく長髪、白い彫刻のような整った顔立ち、全身を金色の鎧に包まれた 美しくもあるが、邪悪でもある姿形――それはまさしく、『彼』以外の何者でもなか った。 「今まで退屈で、しょーがなかったぜ! マリスは死にかけるしよー。俺様の出番も もうおしまいなのかと思ったら、つまんなくなって、ついフテ寝しちまったぜー! 」  彼は、皆が呆気に取られていても気にせず、大声で笑った。 「あああ……! 何者なんだ、こいつは!? 金色の……しかも、喋るゴーレムなん か見たことないぞ! 」  事態がよくわかっていない哀れなプーは、それ以上、目を開けないほど見開き、 足はゴーレムの肩の上を落ち着きなく歩き回っていた。完全に混乱している。  サンダガーは、それへ、ちらっと目を向けた。 「ほほう、俺様のことがわかっていない人間がまだいたとはな。それじゃあ、自己 紹介してやるぜー! 何を隠そう、俺様はゴールド・メタルビーストの化身、獣神 『サンダガー』様だーっ! 恐れ入ったかー! ゴーレムなんかと一緒にすんなよぉ ー! はーっはっはっは! 」  サンダガーは、五月蝿(うるさ)かった。両手を腰に当て、下界に出て来られるのが 嬉しいとでもいったように、いつでも高飛車な笑い声を立てている。 「獣神『サンダガー』だと!? そのような邪神がなぜこんなところに!? 」  プーには、理解不可能であった。まだ気が動転しているらしく、頭を片方の手で 押さえ、思いっきり見開いた目はサンダガーに釘付けだった。 (それにしても、自分の主人は悪い魔道士だっていうのに、それは棚に上げた発言だ よな)  ケインは、ちらっと思った。 「今日の獲物は、ゴーレムと壊れたトカゲか。まあ、いっか。二つもあるんだからな。 ふっふっふっ……」  サンダガーは、腕を組んで、ゴーレムとサラマンダーの二体を物色するように眺め 降ろしていた。 「よしっ! ゴーレムはぶっ壊すとして、トカゲは焼いて食おう! 」  ぽんと手を打って、彼は言った。 (言うことまで、マリスにそっくりだ! )  一行の皆は、そう思った。 「よーし、それじゃあ、いくぜー! 木偶(デク)人形めー! 」  嬉しそうに笑いながら、サンダガーは片方の拳を振り上げた!   その直前に、ヴァルドリューズが一瞬でケインのところへ現れ、次の瞬間、彼ら 一行は同じところに集められていた。ヴァルドリューズの張った結界の中へ。  巨大ゴーレムは、サンダガーの拳を、砕けた方の手とともに両手で、受け止めよう と突き出すが、勢いのいい拳をまともに受け、両方の腕は肩まで罅が入っていくと、 ガラガラと崩れ落ちていってしまったのだった。 「うわあああーっ! 」  プーが、ふわっと宙に浮かんだ。粉々になったかけらは、復活することはなかった。 「な、なんということだ……! こんなことは聞いたことはない! 『水』を使わず して、ゴーレムを、たったの一撃であそこまで……! 」  プーは、あわあわ言っていた。 「だから、俺様は『神』だって言ってんだろー? 所詮ヒトが作ったモンなんか、 神に敵(かな)うわけないのさー! 」  サンダガーは舌舐めずりすると、同じ拳でゴーレムの中心を殴りつけた。  黒い巨体は、あっけなく、石ころとなってドサドサ砂の上に転がっていった。 「あああ……なんてことだあ! これは一大事! 今すぐ大魔道士様に、ご報告せね ば……! 」  プーは、忠実にも、蒼い大魔道士のもとへ知らせようと消えていったのだった。 「ふっ、弱者は逃げ足が速いもの」  サンダガーは、兜からはみ出た金髪をかき揚げ、ふっと笑った。 「次は貴様の番だぜ、トカゲー! 」  言うと同時に、それまで警戒するようにサンダガーを伺っていた巨大サラマンダー に向かい、彼は掌を向け、大きな炎の球を出したのだった。  げきゃぴっ!   サラマンダーは、瞬く間に炎に包まれ、奇妙な叫び声を上げながら、悶えて、跳ね 上がった。 「よーく焼かないとな。デリケートな俺様の胃でも、ちゃんと受け付けるようにな」  サンダガーは、ぶつぶつ独り言をいながら、炎の中に手を突っ込み、大トカゲを 裏返ししたりしていた。  炎に触れても、彼は平気であった。  一行にとっては、自分と同じ位の大きさのサラマンダーを喰らうとは、度肝を抜か れたが、呆れてしまうほどでもあった。 「なんか、マリスに似てないか? 」  カイルが、ぼそっと言い、クレアも、ケインも頷く。  いつの間にか、結界の中に現れたミュミュは、結界の『壁』に、ペタッと張り付き、 その様子を、物欲しそうな顔で見つめる。一見して、腹が減っているようだった。  突然、ヴァルドリューズが顔を上げる。 「どうしたんだよ? いきなり、びっくりするじゃないか」  カイルもクレア、ケインも、ヴァルドリューズを見上げる。  ヴァルドリューズは、結界の壁へ近付き、遠くを見据えるようにして外を見る。  サンダガーは、胡座(あぐら)をかいて、座り込み、嬉々として、少し縮んでしまっ たサラマンダーの肉に、かぶりついた。  間もなく、一行を覆っていた結界が、急に解かれた。 「どうしたんだよ、ヴァル。いつもサンダガーが退場するまで、結界を解かないじゃ ないか」  ケインは、ヴァルドリューズの様子から、不安げな表情を浮かべていた。 「何か、地鳴りのような音が聞こえた気がした。……やはり、今も聞こえる……! 」  彼に続き、クレアも頷いた。 「そう言えば、なんとなく、聞こえるような……? 」  ケインとカイルも、顔を見合わせ、再び、ヴァルドリューズを見ると、いつもと 様子が違うのがわかる。  彼の碧眼には、深刻な色が浮かんでいたのだった。 「……次元の穴の謎がわかった……! 」 「えっ? ああ、あの巨大サラマンダーが出て来たところが? 」  ケインの問いかけには頷きもせず、彼は進み出て、珍しく、声を張り上げた。 「マリス、戻れ! そこは危険だ! 」  彼は、サンダガー――マリスに向かって、そう叫んでいた。  たちまち、サンダガーの身体は、下から白い煙に包まれる。 「うわあっ! 何すんだよー! 」  サンダガーが泣きそうな声で喚(わめ)いた。 『いいから、早く戻るのよ』  マリスの意志の声も、どこからともなく聞こえる。 「いやだーっ! まだ食いかけじゃねーか! 」  それでも、サンダガーは、トカゲにかじりついていた。 「マリス、早く戻るのだ! 」  いつになく、ヴァルドリューズの真剣な様子に、一行が不思議に思っていると、  ずごごごごごごご……!   地響きと共に、サンダガーの足元の砂が、一気に崩れ去った。  それと同時に、ヴァルドリューズの姿が消えた。 「なんだ!? また砂地獄か!? 」カイルが叫ぶ。 「違うわ! あれは……! 」  クレアが言いかけた時だった。  サンダガーが白い煙に巻かれたまま、絶叫し、地割れの中に、沈んでいった。 「マリスー! ヴァルー! 」  ケインたちが叫び続けている間も、地割れは更に広がっていき、一行のいる場所に まで及んで来たのだった。 「うわあーっ! 」  一行もダグラも、砂の中に出来た地割れへと、吸い込まれていくようにして、堕ち ていった――! 


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