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Dragon Sword Saga1 〜Ⅰ.-3〜
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~ 第1巻『旅の仲間:前編』 ~

剣月ライン  Ⅰ.『さびれた町』 妖精紫アイコン3 ~ 結成! ~  剣月ライン 魔法陣効果

 一同は、村の、マリスが取っておいたという部屋に集まった。 「あー、美味しー! やっぱり、マラスキーノ・ティーは、イケるわねー! 」  狭い宿の部屋の中では、マリスが紅茶を入れて、皆に振る舞っていた。  魔道士は、それには手を付けず、香を焚いていた。気にならない程度の甘い香りで あった。  魔道士たちが、瞑想(めいそう)や、自分の魔力を消耗させずに、結界を張ることに、 よく使う代物だ。  だが、今、彼が結界を張っていることは、マリス以外は気付かない。  上級の魔道士には、水晶玉の占いで覗かれたり、話の内容を聞き付けられることも あるので、それを防ぐためが多い。  一人楽しそうなマリスを、じろっとカイルが睨んだ。 「おい、どーゆーことなんだよ。あんた、何モンなんだ? 人間なのか? 」 「当たり前でしょ? 正真正銘、見たまんま、普通の女戦士よ」 (いや、全然、普通じゃないだろーが)  喉から出かかった言葉を、ケインは紅茶と一緒に飲み込んだ。 「俺の目をごまかそうったって、そうはいかねーぞ! 」 「あーら、あっさり、ごまかされたじゃないの」  凄(すご)んで見せたカイルを、彼女は、いとも簡単にあしらった。 「あの銀の甲冑は、どこか大国の軍のものなのか? 」  マリスは、既に甲冑は外していて、普通の町娘のような服装であった。  部屋の隅に置いてある甲冑に、一旦目を向けてから、視線を、質問したケインに 移す。 「あなたの言う通りよ。あれは、……ベアトリクス王国のものよ」 「ベアトリクス王国!? あの世界の先端を行く大国ーー北の海を越えた、あんな遠く から? 」  ベアトリクス王国を知らない者は、そこにはいなかった。  先進国で知られていることもあるが、同時にワンマンな絶対王政の国としても有名 だ。洗練された文化、見目麗しい人種も多いと聞く。  彼女の容姿には、皆、頷けた。 「あたしは、そこで、ある部隊の隊長をやってたのよ」 「ええっ!? 」  ヴァルドリューズ以外、一斉に驚き、まじまじと彼女を見詰めた。  どう見ても、そこにいる皆と、そう変わらない年頃である。  この二〇歳前の娘が、軍を率いてたとは、衝撃であった。  しかし、獣神に変身する前も、戦士の腕はかなりのものだったと思い返す。  もしかしたら、本当に軍隊を率いていたのかも知れない、と皆はすぐに納得した。 「いやぁね~。いくら実力重視の国だったとしても、こんな小娘に、簡単に隊長なん か任せてくれるわけないじゃない。コネがあったのよ、コネが。それが、ちょっと 訳アリで、飛び出して来ちゃったんだけどね」  マリスは手を振りながら、ころころ笑っている。 「カイルも、ベアトリクス王国の出なのか? 」 「俺は違うぜ。こいつらとは一週間ほど前に、ここの一つ手前の町で知り合ったんだ。 それにしても、人が悪いぜ、マリス。女だってこと、何で隠してたんだよ」  カイルが、膨れっ面で、マリスを見る。 「そんなの当たり前でしょ? あんたみたいなナンパ男が、どこに潜んでいるかわか らないし、賊にいつ出くわすとも限らない物騒なこの世の中、か弱い乙女が我が身を 守るために男装する。そんなの常識よ」  しゃあしゃあと、彼女は言うと、紅茶を美味しそうに啜(すす)った。 「ヴァルドリューズさんは、ベアトリクス王国の宮廷魔道士さんなんですか? 」  クレアが発言したのは、マリスの印象が強烈だったせいで、影が薄くなっていた 魔道士に向けてであった。 (確かに、こいつもただ者じゃなかった! 召喚呪文なんか使える魔道士なんて、 そうざらにいるもんじゃない)  ケインは魔道士を見る。  ヴァルドリューズは、既にフードを降ろしていた。  西洋地方の人間に見られる彫りの深い顔立ちに、浅黒い東方系の肌、切れ長の、 澄んだ冷ややかな碧い瞳、肩まで伸びた黒い艶のある髪。  見たところ、いろいろな人種の血が混じっているようだが、全体的に東方系の人間 ということで落ち着いた。  クレアが注目したのは、彼の額に嵌(は)め込まれた、鮮やかな深紅のカシスルビー、 これが、ケインたちも噂に聞いたことのある、宮廷魔道士の証であった。 「彼は、東洋の帝国ラータン・マオの宮廷魔道士だったの。やっぱり、訳アリでね。 要するに、国を飛び出して来た者と、国を追われた者同士が出会って、一緒に旅を することになったのよ」  普通の旅人ではないことは充分伝わっていることであったが、マリスは、おそろし くかい摘(つま)んで説明していた。  カイルが首を捻っていたが、はっと顔を上げる。 「ーーってことは、お前ら駆け落ちだな!? 」  ばたっ。  マリスが倒れた。 「そうではない」  ここへ来て、初めて、ヴァルドリューズが口を開いた。 「もう、こんな時ばっか反応するんだから、あんたは」  マリスが面白くなさそうに、ぶつぶつ言いながら、起き上がった。 「召喚獣を呼ぶというのは聞いたことありますけど、神を召喚する(呼ぶ)なんて、 どうして出来たんですか? 」  多少なりとも呪文が使えるクレアは、魔道に興味があった。冷たく、近付きがたい 雰囲気を持つヴァルドリューズに、怖じ気づくこともなく、質問を続けている。 「召喚獣の時と違い、サンダガーを呼んだ時のあなたの呪文は、全く聞いたことの ない発音でした。しかも、その呼び出したものを、他の人間に乗り移らせるなんて ……有り得ないことです」  ヴァルドリューズが、じっとクレアを見てから、口を開いた。 「神を召喚するには、その神の言葉を用いなくてはならない。他人の身に召喚させる のも、普通では不可能なことだ。マリスにサンダガーを召喚する前に、私は、魔神 『グルーヌ・ルー』を一部自分に召喚し、『彼』の力を借りて、呪文を唱えたのだ」 「魔神『グルーヌ・ルー』ですって!? あの、東洋のーー!? 」  クレアが、うろたえた。 「……おい、わかるか? 」 「……いや、全然」  訳がわかっていないカイルとケインは、お互い顔を見合わせているばかりだった。  ヴァルドリューズとクレアの会話は続く。 「サンダガーに限らず、他の獣神だろうと、召喚することは、上級の魔道士であれば 出来ないこともない。だが、それは、あくまでも、己と同化させるのみ。そのもの 自体を召喚する召喚獣に比べて、神の化身はコントロールが難しい上に、本人との 相性がある。  条件に満たなければ、逆にこちらが意識を乗っ取られ、消滅してしまうとともに、 意志を持った化身だけが暴走してしまうおそれもある。このような事態は避けるべく、 魔道士協会の書物にも載せられてはいない」  淡々と、表情もなく、抑揚のない声で話す彼と反対に、クレアの顔は青ざめ、 明らかに動揺が浮かんだ。 「それって、もしかして、……禁呪なのでは……? 」 「そうよ」  堂々と答えるマリスを、一同見詰めた。 「でも、あたしは『サンダガー』を暴走させたことはないし、ヴァルの『グルーヌ・ ルー』は、知識を授けるだけに留めているわ。例え、禁呪でも、うまく扱えれば、 使ったっていいのよ」  そういうものだろうか? と、ケインとカイルが首を傾げていると、 「だめです! 禁呪を使うなんて! 使えることがわかったのなら、せめて『魔道士 の塔』に届けを出してください! 」  クレアが強く、マリスに抗議した。  『魔道士の塔』とは、正規の魔道士たちを管理する、上級魔道士の組織であった。  世界的に、支部を持つ。  その組織に認められた魔法アイテムを扱う団体は、『魔道士協会』と呼ばれ、 こちらの方が、一般には馴染みがあった。  『魔道士の塔』では、未だ未知数を秘め、危険のある黒魔法を使用するに当たって 掟を定め、正規でない魔道士、つまり、登録もせず、法を守らないヤミ魔道士を取り 締まってもいた。  神官や巫女の使用する癒しの魔法や、魂を浄化する等の白魔法に関しては、一切 干渉していない。  召喚魔法とは、黒魔法の部類であった。 「あのね、『サンダガー』は邪神みたいなもんよ。そんなもの『たびたび呼び出しま すが、いいですか? 』なんて言って、許可がもらえるわけないでしょ? いいのよ、 届けなんか出さない方が」  マリスに突っぱねられて、クレアは黙ってしまった。 「圧倒的な力を持つには、綺麗事ばかりではだめなのよ。攻撃には白魔法よりも 黒魔法の方が有効なのとおんなじでね」  妙な説得力で、一同、納得せざるを得なかった。 「ちょっと待てよ、さっきの話で、召喚神はコントロールが難しい上に相性が あるってことは、マリスとサンダガーの相性が良かったってことなのか? 」  ケインが、ヴァルドリューズに向き直った。 「いかにも。もともと召喚神は、媒体の守り神であるものを呼び出すのが無難だ。 それならば、ある程度の条件はそろっているからだ。だが、そうでないものを呼び 出すには、余程性質が似ているか、本人の核の部分に、実は、同じような面を持って いるか、などが重要になってくる」 「……守護神にしても性質にしても……」 「……結局、どっちにしろ、似た者同士ってことか? 」  ケインとカイルが顔を見合わせると、そうっと、マリスから後退(あとずさ)った。 「ちょっと、ヴァル! そういう言い方すると、あたしが、もろサンダガーと同類に 聞こえるじゃないの! 」  マリスが説明を補足する。 「召喚神を受け入れるにはね、本人の魔法能力にも関係してくるのよ。あたしには、 常人以上の魔力が備わっているの。だから、同化できんの! 」  カイルが、ふっと笑った。 「ウソつけ。幼い頃から魔法能力の高かった者は、魔道士の教育を受けさせられて、 魔道士の道を歩まされているはずだろ? 巫女や魔道士の家系でなければ、そんな ヤツはごく稀だって言うじゃないか。ま、仮に、お前が王族で、小さい頃から、魔道 の教育を受けてたってんなら、話は別だけどな」  マリスは、指を立てて「ちっちっちっ」と、振って見せた。 「ふっふっふっ。イメージトレーニングや、その他にも、魔力を高める方法はいくら でもあるのよ」 「何っ!? 本当か!? じゃあ、俺も訓練すれば、魔力が備わるってのか!? 」  カイルが興奮して目を輝かせた。ケインは、「単純なヤツ」と、呆れて横目で見る。 「時に、あなた」  マリスが、指先をケインに向けた。  ふいに、紫の瞳に捕えられたケインは、ドキッとした。 「見たところ、傭兵のようだけど、なかなか剣の腕が立つみたいね。お手持ちの剣も 興味深いわ。クレア(レディー)を置き去りにしたのは、ちょっといただけなかった けど。ま、キミほどの実力なら、助っ人として、あたしが雇ってあげてもよくってよ」 「ええっ!? 」  声を上げたのは、当事者のケインではなく、カイルであった。 「おい、俺には、金なんか払ってくれなかったじゃないか! 」 「あなたは、勝手に付いて来たんでしょ? その魔法剣に免じて、ゴハン代くらいは 出してあげてもいいけど? 」  カイルが、がっくりと肩を落とした。 「どう? 一緒に来る? 」  もう一度、マリスはケインに尋ねた。  ケインは、慎重な面持ちで答えた。 「その前に、君たちの目的を教えてくれ。悪いことの片棒を担ぐのは、お断りだから な」  マリスは、目を見開いた。  意外に思ったのだった。  まず、その容姿から、おそらく、彼女の誘いをすんなり受け入れなかった者などは、 いなかったのだろう。外見で判断しないようだということ。  そして、思ったよりも低く、落ち着いた声が、自分よりも、実は、彼の方が年上 なのかも知れない、と思ったことであった。  腕を買ったことには違いなかったが、傭兵らしくない穏やかな性質と、童顔では あるが、群青色の大きな瞳には、誠実さと芯の強さが表れていたのが、信用出来る 人間と映ったからこそ、スカウトしたのだった。 (面白い)  どうやら、自分の見立てに間違いはなかったと、満足気に微笑してから、マリスは 言った。 「もっともだわ。それじゃあ、単刀直入に言うけど、あたしたちの旅の目的は…… ヒマ潰しに悪いヤツをやっつけながら、世界を征服することよ! 」  マリスが拳を高く掲げた。ヴァルドリューズは、そっぽを向いていた。  もちろん、ケインは本気にしていなかったが、相棒同士であるこの二人のコンビ ネーションの悪さには、首を傾げた。 「あのなあ、それじゃあ、悪者と目標同じだぞ? 」 「冗談よ、やーね」 「……なんか、あんまり冗談にも聞こえなかったけど」  勝ち気な表情で、マリスは、ケインに言った。 「まあ、大方の目的は、魔物退治よ。さっきの洞穴みたいに、魔界と人間界をつなぐ 異次元の穴が、最近増えてきてるから、それを塞ぐとともに、原因を調べてるって わけ。そのついでに、悪い奴らを懲らしめてまわる……って、まあ、こんなところ かしらね。なんなら、短期契約にしとく? 」  紫の瞳を、くるくると輝かせながら、マリスはケインの顔を覗き込んだ。  もちろん、この二人の目的は、それだけじゃない気もしていた。  知り合ったばかりだが、悪いヤツらとも思えない。現に、さっき魔物を倒したし、 俺も、近頃湧いてくる魔物たちには疑問を持っていた。  原因究明したいのは同じだ。魔物退治だって……。  などと、ケインは、合意する理由を考えているうちに、わかったことがあった。  何よりも、マリスの人物像に、興味を引かれた。その強さにも。  そして、なぜだか、光を感じたのだった。  彼女の旅を見届けたくなった。  ケインの答えは、決まった。 「ありがと」  にっこりと微笑んだ後に、マリスは付け加えた。 「ああ、最初に言っておくけどね、あたしが頼みたいのは『護衛』じゃなくて、 『助っ人』よ。それと、いくらあたしが雇い主だからって、敬語なんか使ったりした ら、はっ倒すからね。あくまでも、対等でいてね」 「わかった」 「賃金は、四週間でリブ金貨五枚。別途宿代、食事代もね。足りなければ、差し障り のない範囲で、どこかで稼いでくれてオーケーよ」  贅沢(ぜいたく)は出来ないが、生活していくには、困らない条件であった。  ケインが、モルデラに来てから、洗濯の次に、請け負った仕事である。  まさか、それが、思いのほか長く続く、不可思議な、己の人生をも左右するほどの 冒険の旅になるとは、その時のケイン、カイル、クレアには、見当もつかなかった だろう。  そして、マリスと、ヴァルドリューズもーー。  星の巡り合わせの如く、噛み合った運命の歯車は、方向を定め、ゆっくりと回り 始めたのだったーー!


アンティーク・ラインアンティーク・ラインアンティーク・ライン ★今さらイラスト描いてみました(2015.7.24) ペン描き↓ ペン描き カラー↓ カラー イメージ違ったら、すみません…(^^; バスター・ブレードが短かったことに気付き(苦笑)、 カラーの方では伸ばしました。 描いてるうちに、ちょっとずつ変わってしまい、 結局はペン入れ……いや、シャーペン下書きの方が気に入ってたり。 にしても、満足する絵を描くのは難しい!(>_<) しかも、絵を描いたのは久しぶり。突然描きたくなった。 シャーペンで下書きしたものを、スキャナー(プリンター)で読み込み、 iPadの無料お絵描きアプリ(ibisPaint X)でペン入れをし、色を塗りました。 ペン描きも色塗りも、すべて指です。(^∇^) 直線が書けなかったので、バスター・ブレードがちょっと残念! (機能としてある? 定規+タッチペンでも出来なかった) それよりも、デザインか…(^^; タッチペンもペンタブレットも使わずに出来るので、 とても気に入っているアプリです。 ※2015年8月〜同アプリをアップデートしたら、 直線、手ブレ防止機能付きました! ★魔法陣、ドラゴンの影イラスト提供★ 『Dragon's Planet』様 ドラプラ


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